柳と別離
3月は別れと旅立ちの季節。送別の歌として古来、有名な、盛唐の王維(699-759)の七言絶句「元二の安西に使いするを送る」の第二句に「客舎青青として柳色新たなり」とある。「柳色新」という表現は、じつは「柳」の語に送別の意をほのめかしたものである。古代の中国では、送別のときに柳の枝を折り取り、これを相手に贈る風習があった。「柳」(りゅう)の字の音が、ひきとめる意の「留」(りゅう)に通じるからとも、柳の枝は曲げてもすぐにもとにもどるので、分かれてもまた会える意を示すからともいう。したがって、別離と柳とは密接な関係があり、漢詩などでも送別の詩には柳をうたうことが多い。別れの笛の曲に「折楊柳」というのがあるが、「楊柳を折る」ことで別れを意味する。
詩全体は、以下のとおり。
渭城の朝雨 軽塵を浥し
客舎青青 柳色新たなり
君に勧む 更に尽くせ一杯の酒
西のかた陽関を出づれば故人無からん
(口語訳)渭城の朝の春雨は、軽い土ぼこりをしっとりと湿らして、旅館のあたりのあおあおとした柳の色もひとしおみずみずしく鮮やかである。さあ君、もう一杯この酒を飲みほしたまえ。これからあの西の方、陽関の関所を越えたなら、親しい友人はいないだろうから。(引用文献:井波律子「中国名言集一日一言」)


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