ナマズの話
ナマズは北海道以南の各地の川や湖沼の砂泥底に住み、古来から広く知られている魚である。ナマズの原語は「ナマツ・ナマヅ」であり、その語意は、「体表の滑らかな、大きな頭の魚」ということか。一般には「ナマズ」と呼ぶが、東京付近では小形のを「チンコロ」と呼ぶ。下卑な感じのこの魚を、私娼・酌婦にたとえて、「チンコロ」とよぶのではないだろうか。その他の地方名に「ヒョオタンゴ」(佐賀)、「ショゲンポオ」(三重)、「ヘコキ」(滋賀)、「ナマダ」(千葉)、「モンダイ」(島根)、「ジシンノコ」(静岡)などがある。ジシンノコは暴れると地震が起きるという俗説から生まれたのだろう。よく知られた地震予知のことわざに、「ナマズが騒ぐと地震あり」との俗諺がある。生物の動きと地震との関係については、ナマズが地震を起こすとの説が江戸時代からあり、とくに安政2年の江戸大地震以後、「ナマズ絵」などでこの説が広まった。昔、椋平広吉が、地震の前には特殊な虹がでる、といい、「椋平虹」といわれたことがある。そのほかにも、「キジが鳴けば地震あり」とか「アリの大群が移動すると地震がある」、「馬の尻尾が動かないと大地震がある」、「牛が腹這いになると地震か噴火がある」などの伝承があるが、たしかなものは一つもない。
ナマズは日本だけではなく中国・朝鮮半島・台湾など東アジアにも多い。中国語では「鮎魚」(ニエンユイ)、韓国語では「メギイ Meggie」と呼ばれる。
ナマズの仲間は世界におよそ2867種類いるといわれ、約半数がアマゾン河流域に生息するといわれ。大きいナマズは長さ3m、体重200㎏にも達する。これらの巨大ナマズのほかに、南アメリカの水域には、長さ1.2mから1.5mのやや小型のナマズもたくさんいる。またわずか2.5㎝くらいの、さらに小型のものが数百種類いる。
ヨーロッパには有名なナマズはドナウ川流域のSiturus glanisであろう。だいたいナマズのことを「シルーロ」「シルールス」「シルーロス」と発音する国が多い。なぜ英語は「キャットフィッシュ」なのだろうか。ナマズのひげと猫とを連想されるのであろうか。
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