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2014年2月20日 (木)

表現の自由と名誉毀損

    実在するある場所を舞台に物語を書くとき、その舞台として使っている地名を架空とせずに、実在の地名そのまま使うケースはよくある。地名は著作物ではないので、基本的に、創作物に実在の地名を出すことは法的に差支えない。これは表現の自由として憲法によって認められている。だが、地名などが、マイナスイメージで描かれたり、地元の人に不快感を与えるとき、関係者から反発やクレームがあることが予想される。1980年、少年ジャンプ連載の漫画「私立極道高校」(宮下あきら)において作中に実在する学校名や校章などが書かれ、抗議を受けて打ち切りとなった。また野球選手のクロマティが自分の名前を使ったタイトルの漫画の実写版映画の公開差し止め請求した事件(2005年)がある。映画は公開されたが、名前の使用を許諾していないことから民事訴訟になる可能性が残っている。このように表現の自由と名誉毀損とが対立するケースはしばしば起こりうる。映画・ドラマなど創作物では「この作品はフィクションであり実在の人物団体等とは関係ありません」などといった断り書きをするのが普通になっている。

Yjimage     今回、村上春樹の小説「ドライブ・マイ・カー」に登場する北海道中頓別町に関する表現が屈辱的であるとして町議員6人が発行元の文芸春秋に抗議するという事件があった。村上はすばやく過ちを認め、単行本にする際に町名を変更する意向を示した。問題の部分は、タバコのポイ捨てを「たぶん中頓別町ではみんなが普通にやっていることなのだろう」と表現されていた。今回の事件は村上春樹という著名な作家だから起こりえたケースで、売れない小説家ならスルーしたであろうし、「屈辱的」というのは大袈裟の感がする。松本清張の小説には実在の地名が多くみられるが、実在の地名でなければ作品そのものが成り立たないであろう。砂の器に登場する「亀高」も当初は迷惑であったかもしれないが、文学作品に取り上げられることでプラス面もでてくることもあるだろう。「月給四十円ではるばるこんな田舎へくるもんか」など夏目漱石「坊っちゃん」には松山に対する田舎蔑視の表現が多数みられるが、地元が漱石に抗議したという話は余り聞かない。村上春樹と漱石・清張との違いなのだろうか。

2013年5月15日 (水)

悪魔の缶詰

Middle_1231831588   ニューヨークの新聞記者ロバートは、ある日スーパーで缶詰の安売りがあったので、いくつか買い込んで家にもって帰った。グリーンピースのスープの缶詰だった。そして、そのうちにいくつかを食べつくした。すっぱい味がしたが、それでもあまり気にしないで口に入れてしまった。ところが四、五日たってからロバートは奇妙な腹痛に苦しみ、医者にいった。診断ではどこもわるいところはなかったが、とにかく胃のなかを検査してみようということになった。検査の結果、彼の胃の中で、なにか小さいものが動いているのが認められた。医者は首をかしげながらも、なにが動いているのか正体がわからないので、様子をみようということになった。ロバートの腹痛は、いよいよ酷くなるばかりで、医者はいろいろな薬を与えたが、まったくその効き目はなかった。

  その胃の中の小さな動くものは、しだいに成長して大きくなっていることがはっきりと認められ、ロバートは七転八倒し。喉から血を吐くこともあった。1ヶ月ほどたったある日、ロバートの腹痛の原因がわかった。ロバートの胃のなかで、ヤモリともトカゲともつかない小さな生き物が、彼の胃を食い荒していたのだった。ロバートは手術を受けたが、そのときはすでに遅く、この世の人ではなくなった。

2012年8月24日 (金)

バナナとトンネル

Photo_3   はじめて汽車というものに乗ったふたりの姉妹のはなしです。向かい側の座席にひとりの商人がすわっていて、姉妹に1本ずつバナナをくれました。バナナをみたことのない二人は、皮をむいて食べることさえ知りませんでした。まず姉のほうが恐る恐るバナナの皮をむいて食べ始めました。ちょうどそのとき汽車がトンネルに入りました。姉が妹に向かって言います。

姉「もうバナナを口に入れた?」

妹「まだよ」

姉「食べちゃだめよ。バナナを食べると目が見えなくなるわよ」

(松田道弘編「世界のジョーク事典)

2012年3月 7日 (水)

輝く巨人の星となれ

C0a61afe   昭和32年、長嶋茂雄の巨人軍入団が決まった日、その話題を憎らしそうに聞いている少年がいた。少年の名は、星飛雄馬。飛雄馬は父・一徹からしごかれる日々に、野球を憎んでさえいた。そこは長嶋選手入団発表パーティ会場である。

「ではここで偉大なる先輩である千葉さんから栄光の背番号3が励ましを込めて長嶋くんに譲られます」

「長嶋くんを迎え史上最大の三塁手も巨人軍から生まれるだろう」

   その時、飛雄馬は長嶋に魔送球を投げつけた。それを見た川上監督は、かつて星一徹が投げていた魔送球を投げる少年に驚き、逃げる少年を追いかける。

   飛雄馬が家に帰ると、一徹は酔っ払って暴れている。理由は飛雄馬が禁じている魔送球を投げたからだけではない。長嶋が恐れもしないでみごと見破ったからでもあった。この様子をみていた川上は、明日の巨人軍のために一徹が史上最大の投手を育てていることを知る。

    一徹は夜空を指しながら飛雄馬に言う。「飛雄馬よ、見るがいい。あの星座がプロ野球最高の名門巨人軍だ。おれもかってはあの輝かしい星座の一員だった。だがそれが今ではもう手の届かない彼方に遠ざかってしまった。飛雄馬!お前はなにがなんでもあの星座まで駈け登るのだ。巨人軍という星座のど真ん中でひときわでっかい明星となって光れ!輝け!」「野球は憎いけどこと野球となると、しゃんとするとうちゃんはやっぱり好きだぜ」そして厳しい秘密の訓練が続けられた。(巨人の星1)

2011年6月18日 (土)

バッドエンディング

   駅を降りて、商店街があって、パチンコ屋から流れる流行歌を聞きながら、路地から路地へと抜けると、小さな本屋がある。僕はここの経営者だ。いや経営という大げさなものじゃない。本は売らないし、貸さない。店内で読むだけの地域文庫のようなものである。古い本ばかりなので、めったに客はこない。1人でぽつんと考えでいるとこが多い。死んだ父のことや母のことを思い出す。そしていつかは自分もこの世から消えてしまうといことを何度も考えている。

   うだるような暑い日だった。伯父さんが急に容態が悪くなって、病院に連れて行った。年中無休の店だが、少しの間は店を閉めたままにした。昼過ぎに店に戻ると、店の前に若い女性が立っていた。「おじさん、ずいぶん待ったわ。こんな時間まで閉めるなら、一言書いといてくれたらいいじゃない!」近所の米屋の娘のナツコだった。「ゴメン、ゴメン。今すぐ開けるから」僕は電気を点けて、シャツターをあげた。そして駄菓子屋で買ってきたアイスキャンデーを娘に差し出した。ナツコは黙って受け取り、ソファーにもたれてカリカリとかじった。「おじさん、GEの新しいのない?」ナツコは流石景の「GE グッドエンディング」の愛読者だった。「ああ、8巻が入ったよ」というと、ナツコは取り出して、黙って30分ほど読んで帰って行った。

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