スズランの毒
釣り鐘状の小さな白い花をつけていい香りがするスズランだが、可愛い花には毒がある、有毒性の成分を含んでいる。20世紀の終わり、ドイツのオスターマーケンという町で3歳になる養女が、のどが渇いたのスズランを挿したコップの水を飲んで死亡した例がある。スズランに含まれる有毒成分は30種を超えるが、その多くはま心臓への影響を持つもので、中でもコルバラトキシンは致死傷がおよそ18mg前後という強力なものである。
李香蘭の歌唱により知られている「夜来香(イェライシャン」。夜になると濃厚な香りを放つことから中国では「夜来香」と名づけられた。蘿藦(ががいも)科の植物。トンキンジャスミン、またはナイトジャスミンという。学名は Telosma cordata。古い植物図鑑などでは夜来香がチューべローズであると言われたが、実際は別種の植物であることがわかった。(森山厄介)
冬の訪れとともに、園芸店の店先はシクラメン一色となる。どこの家庭にもシクラメンの鉢花が飾られる。美しく、優雅な貴婦人のようである。サクラソウ科の多年草。地中海沿岸生まれのシクラメン・ベルシクムをもとに約20種が分布し、1731年にイギリス持ち込まれて広がった。名前はギリシア語の「まるい」「旋回」などの意味をもつcyclosからきたという。1605年にウィリアム・恋図が作った庭の植物一覧表にその名がみえる。その後改良がなされね財津、オランダなどで大輪系品種が確立している。日本へは明治から大正にかけて渡来し、昭和に入ってから本格的生産が始まった。別名「豚のまんじゅう」、牧野富太郎は「篝火花」という名前を考案した。昭和50年に小椋佳の「シクラメンのかほり」がヒットすると、シクラメン・ブームが起こって高級鉢物として日本に定着した。(森山厄介)
カーネーション。ナデシコ科の多年草。別名ジリフラワーともいい、カーネーションの原種クローブ・ピンク(丁字花)の栽培の歴史は古い。プリニウスは、アウグストゥス帝の治世にスペインで見つけられたと紀元後1世紀に書いている。そしてスペインでは、飲み物に香りをつけるために用いるとも書いている。アフリカのイスラム教徒がカーネーションを栽培し、それが13世紀になりチュニスを経てヨーロッパに紹介された。15世紀頃から園芸品種の開発が進み、1538年、イギリスの植物学者ウィリアム・ターナー(1508ー1568)の著書「新本草書」に初めて「カーネーション」が見える。カーネーション(carnation)、別名ジリフラワー(gillyflower)はイギリスの庭園に植えられる最も古い植物であるだけでなく、何世紀にもわたって一番愛された花である。(森山厄介)
フランクフルトで出版された商品カタログ「花譜」(1612年)
「17世紀オランダを揺るがした魅惑の花チューリップ」森山厄介
チューリップの魅力は花姿や花色に富んだ数多くの園芸品種があることで、園芸品種は約5000ある。原種は約150種といわれ、その約4割が天山山脈の西側からパミール高原の山岳地帯を原産地とする。そして北はシベリア、東は中国へ、南はカシミールやインド、西へはコーカサス地方へと伝播した。ここからトルコやバルカン半島へ、さらに16世紀末には人の手によってヨーロッパにもち込まれた。チューリップ伝来にはいろいろな話が伝えられている。1554年に神聖ローマ帝国皇帝フェルディナンド1世の大使として、スレイマン大王治世下のトルコに赴任したアウグウス・ド・ブスプッチが、ヨーロッパ人としては初めてチューリップを見た。その頃、トルコではチューリップの栽培は相当進んでいた。彼はウィーンに種子を持ち帰った。おそらく球根も持ち帰ったと思われるが、それらは「贈り物」として貰いうけたものだったにもかかわらず、「少なからず出費があった」と記している。1559年、植物学者コンラート・フォン・ゲスナーはアウグスブルグで数本のチューリップが咲いているのを見て、1561年に出版した絵入りの書物に初めてチューリップの絵を載せた。彼の名前を取ってゲスネリアーナ種と名づけられた。また、こんな話も伝わる。あるイギリスの園芸研究家がトルコに赴いた時、「この花は何か」と聞いたところ、現地のトルコ語ではラーレと言うのだが、形を聞かれたと勘違いした現地人が「この花の形は頭巾の形をしたトルコ帽(チューリパン)に似ている」との意味で、「チューリパン」と紹介した。これがこの花の名前として、世界中に広まったのである。
チューリップは変種が生まれやすいために、変わった花を咲かせるチューリップの球根に運良く当たれば、大儲けができた。とくにオランダを中心にして多量に栽培され品種改良された。ライデン大学初代植物学教授カロルス・クルシウス(1526-1609)は、大学の植物園での栽培に成功した。チューリップはたちまちヨーロッパ各国に伝わり、貴族や大商人の間で流行した。やがて球根の先物取引が始まり、1633年には投機ブームとなり、1637年2月、ついに恐慌を引き起こし、球根は暴落した。契約の履行は不可能になり、破産者続出は必死となったが、オランダ政府の介入により取引高の5~10%支払いのみですべて清算され、破局は回避された。この恐慌は、生産の拡張に基づかない前資本主義恐慌の代表的な実例といわれている。18世紀初め、西欧的な趣味、贅沢がオスマン帝国で導入され、チューリップが大流行した。アフメト3世の頃をチューリップ時代と呼ぶ。
このような17世紀のチューリップ狂時代を風刺した小説にデュマの『黒いチューリップ』(1850年)がある。青年コルネリウスは黒いチューリップの栽培に成功するが、彼を妬んだボクステルの陰謀により投獄される。牢屋番の娘との恋がうまれ意外な展開の喜劇小説に仕上がっている。黒いチューリップは実際に存在するのだろうか。19世紀半ば頃まで育種家は、黒、緑、青花のチューリップを作出することが長年の夢だった。しかし1891年に、「ラ・チューリップ・ノアール」という黒色品種がついに登場した。さらに1944年、より黒み帯びた「クインオブナイト」が作出され、架空の物語が現実となった。緑色は、花弁に緑色の筋が入るヴィリディフローラ系があり、「アルバ・コエルレア・オクラータ」と呼ばれる「青いチューリップ」も近年登場している。現在、単色で黒、緑、青のチューリップが育種家により追求されている。(世界史こぼれ話)
むかし不美人のことを「附子(ぶす)」と呼んでいた。それはトリカブトの毒のことで、この毒が傷口に入ると、感情や思考力が停止し、まったく無表情になってしまう。そこで、この無表情になった状態のことを「ブスだ」といい、転じて、表情のない人、美しくない人のことを、「ブス」と呼ぶようになった。「東海道四谷怪談」お岩さんが飲まされたのもこのトリカブトの毒である。
トリカブトはキンボウゲ科の多年草。秋には紫碧色の美しい花が咲く。英名はモンクスフード。その毒はむかしから知られており、アイヌは矢にこの根の汁を塗ってクマ狩りに用いたという。1991年夏、トリカブトの毒を使った保険金殺人事件がワイドショーを賑わしていた。ドラマ「トリカブト殺人事件、疑惑の女」はこの事件をモデルに犯人を女性に置き換えている。フリーライターのマリー(早見優)は、石垣島を取材中に、釣り客の神木の突然の死に遭遇した。夫の死を聞きかけつけた妻・涼子(増田恵子)が、神木の弟から、飲ませていたカプセルが原因ではないかと責められているのを目撃した。涼子は神木との結婚が3度目だったが、3人の夫はいずれも病死で、3人とも涼子の勧めで薬を飲んでいたことが分かった。また涼子が神木に多額の保険金を掛けていたことも判明し、疑惑が深まっていく。実際のトリカブト事件は有罪が確定しているが、当時は係争中であったので、ドラマは疑惑のままで終わっている。神谷にトリカブトの鉢を販売した植物商の証言や大量のフグを購入していたところを目撃した情報もあり、状況証拠の積み重ねにより有罪となった。トリカブトは即効性であるが、フグの毒を混ぜることにより、時間を遅らせることができるという。これによって神谷のアリバイが崩れたといわれるが、まるで推理小説より奇怪な事件である。(monkshood)
昨夜のFNS歌謡祭を観ていたらSexy Zoneが「夏のハイドレンジア」を歌唱。ハイドレンジアとはどのような花か。セイヨウアジサイのことで、学名hydrangeaは、さく果が水瓶に似ていることから、「水(hydra)+容器(angeion)」に由来する。
山には山の愁あり 海には海のかなしみや ましてこころの花園に 咲きしあざみの花ならば
伊藤久男の「あざみの歌」である。作曲家の八洲秀章が自身の歌唱で昭和24年8月8日から1週間放送し、その後、のど自慢等で歌われるようになり、昭和26年に伊藤久男の歌唱でレコード化された。歳月は経て、倍賞千恵子や芹洋子などが愛唱して、現在では叙情歌の鉄板ソングとなっている。
ところで花のことはよく知らないので、アザミとはどんな花なのか画像で見る。綿毛のついた紫やピンクの花を咲かせるヒナギク科の植物である。ギザギザとしたトゲ状の緑の葉をつけ、固い茎を持っている。アザは八重山語でトゲ、イラ(刺)の意で、アザミは刺多い物の意、とする説がある。漢字で書くと「薊(けい)」を当てている。
アザミの種類はたいへん多く北半球に約250種が分布する。英語ではシスル(thisle)という。「旧約聖書」にはアダムとイブがエデンの園からイバラとアザミだらけの荒れ地に追放されたと記されている。英語聖書を調べると、weed(雑草)、thotn(棘のある植物)とある。
アザミには棘がある。13世紀スコットランドでは、ノルウェー軍が夜襲をかけて来た際、素足の敵兵が暗闇でアザミを踏んで悲鳴をあげたことから、敵の接近を気付き、スコットランド軍は大勝した。このためアザミはスコットランドの国花となり、今でもブローチやタペストリー、陶器などのデザインにアザミの花が用いられている。
世界の国々には気候風土の違いから、それぞれの愛される花があります。寒い国のイメージがあるロシアだがヒマワリが国花です。ロシアでは食用や油糧として栽培されているとか。そういえば映画「ひまわり」のラストシーンの広大なひまわり畑が印象的ですね。イギリスはドッグ・ローズ(ドッグとは野生の意)、フランスはユリとアイリス(あるいはスズラン)、オランダはチューリップ、スイスはエーデルワイスとアルペンローゼ、ドイツはヤグルマギク、イタリアはデージー(ヒナギク)、ギリシアはニオイスミレ、オリーブ(準国花)。アメリカは国花はなく、州花がある。イギリスのバラは皇室の紋章などによく使われが、イギリス全体では、イングランドのバラ、スコットランドのアザミ、北アイルランドのシロツメグサ、ウェールズのニラ(:現在はラッパスイセン)がそれぞれの表象になっている。
日本はサクラとキク、中国はウメとボタン、韓国はムクゲ。ではベトナムは?。なんとタケなんです。タケには花があるのだろうか。東南アジア諸国はジャングルが多いので樹木を国家とするところもある。竹の花は開花は45年、60年、120年ごとと周期が長いため、珍しい。画像は豊橋の植物園の「金糸竹(キンシチク)」
世界の国花
アルゼンチン オンブ
アイルランド シャムロック
イスラエル オリーブ
インド ケシ
インドネシア マツリカ(メラチ)
ウルグアイ エリスリナ(セイボ)
オーストラリア フサアカシア
カナダ サトウカエデ
グアテマラ ミツビシラン
コロンビア カトレア
スリランカ ハス
チリ ツバキカズラ
北朝鮮 スモモ
デンマーク アカツメグサ
ドミニカ マホガニー
ニュージーランド コーワイ
ビルマ サラソウジュ
フィリピン マツリカ
ブラジル アサヒラン
ペルー ヒマワリ
ボリビア ハナシノブ
ポルトガル ラベンダー
南アフリカ共和国 ブロテア
メキシコ ダリア
レバノン レバノンスギ
ロシア ヒマワリ カミツレ
草花にはいろいろな種類があるが、花屋さんで売られている花の名前くらいは覚えておきたいものだ。キク、カーネーション、バラ、ガーベラ、ゆり、スターチス、トルコギキョウ、カスミソウ、りんどう、チューリップ、アルストロメリア、ダリア、ラナンキュラス、シャクヤク、スイセン、パンジー、フリージア、ネモフィラ、ベゴニア、アマリリス、カトレア、コチョウラン。
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