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2025年3月25日 (火)

人名と教養

Photo_2  すこし前の話だが安倍首相が憲法学者・芦部信喜の名前を参院予算委員会で質問され、「私は存じ上げておりません」と回答した。(2013年3月29日)。このことがネット上で話題となったことがある。芦部信喜は日本の憲法学者、宮沢俊義の弟子で、近年の憲法学者の中では最も高名な人物である。安倍は法学部卒で国会議員、それも改憲論者というのがその理由である。だがこのような人を貶める論法は姑息で卑怯という感が否めない。昭和期の憲法学者の名前をあげるとして、美濃部達吉、我妻栄、宮沢俊義の名前は「コンサイス日本人名事典」(1990年版)には収録してあるものの、問題の芦部の名前はない。知らないとしても無教養とまではいえまい。もちろん一国の総理であり、憲法を論ずる政治家としての見識には失望させられる。また憲法の知識があっても、著者の名前を留意しない人もいる。本に書かれている内容が大事であって、著者や書名や発行所には意に介さないタイプの人も結構いるようである。これらの知識は、いわばただの符牒であって教養とは無関係なのである。仮に百歩譲って、芦部信義の名前を認識することが憲法を語る上での最低常識だとして、コンサス日本人名事典に未収載の人名も加えるのなら何人の人名を知らねばならのか。コンサイス約14000名プラス世界人名約1900名(山川の世界史人名辞典)、合計15900名となる。たぶん全て知っている人はいかなる博覧強記の人でもいないと思う。また姓名をすべて知らなければならないのか、業績とか人となりを知らないと、知ったことにはならないのではないか。ピカソのフルネームをいえる人はいないし、エル・グレコの本名ドメニコス・テオトコプロスを知る人は少ない。バッハ、ハイドン、モーツァルト、ベートーベンの名を知らなければ無教養と決めつけるならば、その人はフル・ネームを正確に言えるのだろうか。人名はふつう苗字が通称名だが、ナポレオンやミケランジェロ、ラファエロ、ダンテ、ガリレオなどはなぜか名前で覚えている。とくに規則があるわけではなく慣例としかいいようがないつまりすべての名前はただの符牒にすぎないのである。

 フランスの哲学者ヴォルテールという名前は、本名アルエArouetをラテン表記にしたAROVETLIのアナグラムの一種らしい。ヴォロンテール(意地っ張り)という渾名が由来という説もある。

   AKBの川栄李奈ちゃんがある番組でこんなエピソードを紹介している。「あのぉ、私なまえが川栄って言うんですけど、AKBに入りたての時、周りの評判とか気になって、「川栄」でネットを検索してみたんですよ。そうしたら、見事に大川栄策さんしかでてなくって…」

 

 

2025年3月19日 (水)

ペンネーム・芸名にまつわる奇話あれこれ

  名前には不思議な力が宿るので正確に覚えたいものである。井原西鶴、太宰治、司馬遼太郎、レーニン、トロッキー、スターリン、魯迅などはみな本名ではなく筆名である。世界史の人物では第三回十字軍のアラブの英雄サラディン。サラーフ・アッ・ディーンが正しい。

  第48代横綱大鵬には本名の納谷幸喜( なやこうき)のほかに、イヴァーツ ・ボリシコというロシア名がある。森鷗外の「鷗外」は友人・斉藤勝寿の号「鷗外漁史」を拝借したもの。小説「舞姫」を発表した際に「鷗外」と名乗ったことに始まるが、彼はその後も作品で使い、このペンネームが有名になってしまったのだ。

   小説家は、小説の精神をそのまま具現化して読者に伝える主役や脇役の名前の命名に苦心を払うらしい。かの文豪シェイクスピアがハムレットやオフィーリアをどのように生み出したのか興味深い。ところで名前は平凡な名前と珍しい名前のどちらかに二分される。山田太郎、鈴木一郎、ジョン・スミス、ウイリアム・ウィルソンなどは平凡な名前、ありふれた名前の代表格だろう。

    対照的に珍しい名前、珍名、奇名、難しい名前などはインパクトがあるので小説などによく使われる。けれども不思議なもので何度も聞くうちに、めずらしくなくなって、ひとつの存在としてのアイデンティテーを確立してしまう。星飛雄馬などは梶原一騎が考案した最高のネーミングだろう。このようにスター性のある人にはなにかしら名前そのものにパワーがあるから不思議だ。「純と愛」に出演している吉田羊や「まれ」の土屋太鳳もインパクトある名前だ。広瀬アリスは事務所社長の鶴の一声で決まった。芸名の由来は本人も分からないそうだが、華やかな顔立ちにピッタリだ。

   「しりあがり寿」「辛酸なめ子」、女性器をテーマにした作品で知られる「ろくでなし子」など珍名は漫画家に多い。お笑い、寄席芸人にも珍名は多い。ケーシー高峰は医学漫談でアメリカのドラマ「ベン・ケーシー」に因む。高峰は高峰秀子のファンだから。桜金造も桜田淳子に因む、あこがれ型芸名。プリティ長嶋は長嶋茂雄に由来。反町隆史はボクサーの龍反町に由来する。珍しい芸名では丹古母鬼馬二。「たんこばきばじ」と読む。ゲスの極み乙女のドラマー「ほないこか」。脇役の螢雪次朗は1960年代に大映作品などで活躍した蛍雪太郎に因んでいる。アイドルも珍しい名前が増えたような気がする。日向坂46の新メンバー、蔵盛妃那乃「くらもり ひなの」。

  珍名芸人といえば「たけし軍団」がとくに目立つ。そのまんま東、ガダルカナルタカなどは著名人だが、なかにはヒドイ芸名をつけられたという被害者もいる。阿部定忠治(のち鳩山来留夫に改名)、無法松、お宮の松、玉袋筋太郎、犬神クヒオ、ガンビーノ小林、マダ村越。江頭2:50。深夜2時50分以降に酔いが回って暴れ出すことから名付けられた。ダンカンはシェイクスピア「マクベス」の登場人物スコットランド王ダンカン。

    歴代相撲の四股名では、猫又三吉、三毛猫泣太郎、自動車早太郎、文明開化、凸凹大吉、ヒーロー市松、成瀬川土左衛門、山本山。ボクシングでは、ガッツ石松、ベンケイ藤倉、牛若丸あきべぇ。

    珍しい名前といえば、「玄武岩」という名を見て驚いた。ヒョンムアン(玄武岩)さん(北海道大学大学院准教授。1969年生まれ。)ペンネームには変わった名前が多い。団鬼六、吉田戦車、荻原魚雷、わかぎゑふ(若木F)、などは一度聞いたら忘れないほどインパクトがある。

    珍しい芸名が裁判になったこともある。高知東急という俳優が、1996年、東京急行電鉄から「高知に東急が進出したと誤解を受ける」と芸名使用停止を求められた。裁判で敗訴し、その後、「高知東生(たかちのぼる)」と改名している。企業のかなりコジツケのような言いがかりだったが、裁判所は一個人命名の自由よりも大企業に贔屓したとみている。

 

 

2025年2月15日 (土)

読みにくい名前は今後も増加する

  「亜人夢(あとむ)」、「瑠美衣(るびい)」、「希空(のあ)」、「澄海(すかい)」、「柊希(しゅうき)」、「心陽(こはる)」、「心愛(ここあ)」「彩夢(ゆめ)」・・・アニメキャラクターのような名前の子供が増えている。ある親が小学生の名簿を見てびっくりした。女子の名、「〇子」は100人のなかで、わが娘たった一人だった。少子化のため親は我が子に個性的な名前をつけるようになった。比較的平凡な感じがする「子」のつく女子名は避けるようになった。古風というか、真面目という感じが将来どのように捉えられるか親が不安であり、「子」を避けるようになったのであろうか。2016年の新生児で「〇子」はわずか3%にすぎない。

 森鴎外は、ドイツに留学経験があるため、五人の子に洋風の名をつけた。長男は於莵(=オットー)、長女は茉莉(=マリー)、次男は不律(=フリッツ)、次女は杏奴(=アンヌ)、三男は類(=ルイ)。海外でも通用する名前を考えのだという。

   女子の名に「子」とつけるのが流行するのは明治33年頃に急増する。津田梅子(1864-1929)は、初名は「うめ」であるが、明治35年に漢字表記を「梅子」に改めている。与謝野晶子(1874-1942)も本名は「志ょう(しょう)」であるが「晶」(しょう)、そして「晶子(あきこ)」という筆名を使用している。「〇子」という命名は女性が輝くシンボルとなった。

   武者小路実篤の明治41年の処女小説「芳子」に次のような下りがある。「兄は「なんという名をつけよう」「しる子がいい」「団子がいい」「きな子がいい」などふざけてはいたがいい名が考え出せない。」 この当時、すでに女子に「○子」は一般的になっていたらしい。だが子が付く女子は昭和39年、高度成長期の頃から次第に減少していった。背景にはテレビの普及とアイドルタレントによる影響があるらしい。とくに昭和32年に「明美」という名前が登場したのをきっかけに、「直美」など「子」が付かない名前が増えてくる。キラキラネームが増えたのは1990年代半ばごろから。ちょうどインターネットが普及し始め、難しい漢字も検索で手軽に調べられるようになってきた頃である。最新の「キラキラネーム」ベスト5。皇帝 しいざあ、一心 ぴゅあ、大海 おーしゃん、姫星 きてい、愛羅 てぃあら。法務省も改正戸籍法の施行をうけて、読み方の指針を発表している。漢字の意味と正反対の読みなどの場合を除いて広く受け入れることになる。しかし塾講師の林修は経験上から読める名前の生徒のほうがキラキラネームの子よりも成績が良いという。つまり本人には全く責任はないとしたうえで、キラキラネームと学力にはある程度の相関性があるという見解を示している。

(参考:佐藤稔「読みにくい名前はなぜ増えたか」、橋本淳治・井藤伸比古「子のつく名前の誕生」)

 

 

 

 

2025年2月13日 (木)

苗字制定記念日

Habe 本日は苗字制定記念日。江戸時代、苗字を使っていたのは貴族と武士だけだったが、明治3年9月19日、「平民苗字許可令」により平民も苗字を持つことが許された。しかし、苗字を附けたら税金を課せられるという噂が広まり、なかなか苗字を名乗ろうとする者は少なく、苗字制度はなかなか確立しなかった。そこで明治8年2月13日、明治政府は「平民苗字必称義務令」という太政官布告を出し、すべての国民に姓を名乗ることを義務づけた。推進者は大久保利通である。いきなり苗字を考え出して名乗るわけだから、おもしろい苗字も数多くできた。富山県射水市の新湊にはめずらしい苗字が多く残っている。「釣」「網」「魚」「波」「海老」「米」「菓子」「酢」「飴」「風呂」「桶」「地蔵」「牛」「菊」などがある。今まで、苗字を持っていなかった人々は、自分の苗字を考え作るのに、ずいぶん苦労したと思われる。

    「名字由来net」が便利だ。たとえば「剛力」と入力し検索すると、読み「ごうりき」、全国順位42871位、全国人数およそ60人。静岡県発祥の高力氏と関連する説もあると解説。難読稀姓調べによい。「中二病でも恋したい」のヒロイン小鳥遊六花。「小鳥遊」は難読稀姓の典型例だが、「たかなし」と読む。信濃国の高梨盛光が、長男に高梨、次男に鳥梨、三男に小鳥遊、四男に仁科の姓を与えたことからと解説する。小鳥が遊ぶ→天敵(鷹)がいない→たかなし。映画監督の神代辰巳の「くましろ」は珍しい。「四月一日」は「わたぬき」と読む。四月一日に綿入れの着物から綿を抜くから。(2月13日)

 

 

 

2025年2月 8日 (土)

芸名アラカルト

 日本テレビのドラマ「彼女たちの犯罪」。前田敦子・深川麻衣・石井杏奈と旬の3人の美女が主演だったが、実は、もうひとり美人が出演していた。名前を調べたら「ほな・いこか」という。「ゲスの極み乙女」のドラム担当。女優でも活躍中である。「徳川一郎」という歌手を知っているか。「昭和枯れすすき」で150万枚の大ヒットを飛ばした「さくらと一郎」の男性のほうである。芸名調べは面白い。

    旧国名を芸名とする芸能人は多い。近江俊郎、浪花千栄子、淡路恵子、丹波哲郎、山城新伍、長門裕之、長門勇などいずれも大物ぞろい。もともと旧国名は「大和」「武蔵」「長門」「陸奥」「伊勢」「日向」と日本海軍の専売でそれも戦艦にだけ称するビッグネームである。戦後は解禁となって新スターが続々と使用したものである。ところが国名だけに重厚で責任がともなう。都はるみがプロデュースした歌手「大和さくら」はその重責に耐えかねてかスターになれなかった。美人で歌唱力もあったが、芸名の荷が重すぎた。讃岐(香川県)を芸名にした讃岐祐子も「ハローグッドバイ」という名曲を残したものの70年代B級アイドルで終わった。

    歴史上の人物をすこしもじって芸名にするチャッカリ屋もいる。藤原釜足は大化の改新・藤原鎌足、中村是好は満鉄総裁・中村是公の名を拝借している。アクションスター内田良平は右翼大物の内田良平を拝借したのか定かではない。たまたま歴史上の人物と重なった場合もあるだろう。しかし内田良平ほど役柄と芸名がピッタリとした俳優をほかに知らない。

一万慈鶴恵(いちまんじつるえ)という変わった名前の女優がいた。東宝の怪獣映画のエキストラとして出演している。クレジットには一万慈多鶴恵(いちまんじたづえ)と書かれている場合もある。

歌手の矢吹健は「あしたのジョー」矢吹丈から拝借した芸名なのか不明である。

「山のロザリオ」などのヒット曲で知られる女性三人組コーラス・グループ「スリー・゜グレイセス」。Three Gracesとは、ギリシア神話の三美神のことであろうか。ゴダイゴのバンド名は後醍醐天皇に因む。ミッキーの名字が吉野→吉野朝廷→後醍醐天皇。

アメリカの喜劇俳優レッド・スケルトン。スケルトンとはストーブの燃焼筒のこと。レッド=赤、で火が燃えている、というシャレなのか。イギリスの名優マイケル・ケインは偶然映画館で「ケイン号の叛乱」が上映されていて、ケインを芸名にした。

2025年1月30日 (木)

ガンジーのフルネームを言えますか

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  1949年のこの日、「インド独立の父」マハトマ・ガンディーがニューデリーで極右ヒンズー教徒の青年ナトラム・ゴドセにより暗殺された。ゴドセは同年処刑された。ガンディーはふつう「マハトマ・ガンジー」と称される。「マハトマ」とは「偉大なる魂」という意味の尊称である。本名を知る人は少ない。モーハンダス・カラムチャンド・ガンディー Mohandas Karamchand Gandhi。1月30日

2024年12月 3日 (火)

芸能人の運命を左右する改名あれこれ

   生瀬勝久の当初の芸名は「槍魔栗三助(やりまくりさんすけ)」だった。最近では、桜庭ななみが宮内ひとみ、岡田健史が水上恒司、能年玲奈が独立騒動で芸名を「のん」と改名している。芸名は芸能人の命だ。五木ひろしは成功するまでに、5回改名している。川中美幸は春日はるみ、夏川りみは星美里、壇蜜は齋藤支静加という旧名がある。華原朋美には三浦彩香、遠峯ありさ、という旧名がある。

   むかしから改名して成功した芸能人は多い。林長二郎が長谷川一夫、城健三郎が若山富三郎、柴田吾郎が田宮二郎、峰岸龍之介が峰岸徹、安田道代が大楠道代、丸山明宏が美輪明宏、悠木千帆が樹木希林、ラビット関根が関根勤、高樹沙耶が益戸育江、浜崎くるみが浜崎あゆみ。漢字を平仮名に、あるいはその反対の場合もある。柳ユーレイ→柳憂怜、柏原よしえ→芳恵、大谷みつほ→允保。伊藤麻衣子→いとうまいこ、にしきのあきら→錦野旦。唐木淳→黒木憲ジュニア。元ほっしゃん→星田英利。横綱若乃花(本名:花田勝)は風水建築デザイナー直居由美里のアドバイスで芸名を「花田虎上(まさる)に改名している。最も多く改名した芸能人は池田裕子(画像)。本名の三門裕子。堀内裕子→桐生裕子→桐生ユウ子→桐生ゆう子→絵門ゆう子。

 

 

2024年9月 6日 (金)

ジェンダーレス・ネーム

 70年代に活躍したドミニク・サンダというとても美しい女優がいた。そのせいか「ドミニク」とは女性に使われる名と思っていたら、一般的には男性のほうが多い。フランスの画家アングルはドミニク・アングルである。英国俳優ドミニク・クーパー、ドミニク・モナハン、テニスのドミニク・ティームなど。フランスでは女性名は男性名に「e」をつける。例えばシモン(Simon)はシモーヌ(Simone)。ドミニクはDominiqeともとからe がついているので男女同形である。 「ブルック」もブルック・テイラー(男性、数学者)、ブルック・シールズ(女優)。「ダニエル」もダニエル・ダフォー(小説家)、ダニエル・ダリュー(女優)と男女共用名前である。

 西洋には男女かかわらず使える名は多くないが、なぜか日本では男女関係なく使える名は多い。大相撲の若の里の下の名前は「忍(しのぶ)」である。耐え忍ぶ若の里にピッタリの名。女優の中山忍のように「しのぶ」は女性名にも多く使われている。忍、薫、千秋、千里、泉、静香、恵、潤、歩、飛鳥、晴美などは男女に関係なく使える名前である。近年、男女共用名前、ユニセックスな名前は増加傾向にある。ジェンダーレス社会になれば、子どもの選択肢を広げてあげることができるかもしれない。

小山内薫と八千草薫

山川千秋と鎌倉千秋

大江千里と海原千里

柳田泉と森泉

亀井静香と荒川静香

若草恵と横須賀恵

松本潤と長谷川潤

加藤歩と伊藤歩

片岡飛鳥と斎藤飛鳥

曽根晴美と井上晴美

原樹里と上野樹里

 

 

 

 

 

 

2024年9月 5日 (木)

ヤロスラフ

  ヤロスラフ1世はキエフ・ルーシの大公。「賢公」と呼ばれる。父はウラジーミル1世。ヤロスラフという名はロシア・東欧諸国に多い。「尼僧ヨアンナ」で知られるポーランドの作家ヤロスラフ・イヴァシュキュヴィッチ。パリ五輪・女子走り高跳びで優勝したウクライナの選手は、ヤロスラワ・マフチフ。寝袋で横たわった姿が、SNSからは「まるで眠れる森の美女」みたいと大きな話題となった。

 

2024年6月16日 (日)

近代名前の成立と消滅

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  近代名前はだいたい明治・大正期にほぼできあがった。たとえば男子には「男」「郎(朗)」「雄」「夫」がつく傾向が増えてきた。

 

柳田国男 (明治7年生れ)
有島武郎 (明治11年生れ)
仁科芳雄 (明治23年生れ)
加藤道夫 (大正7年生れ)

 

  明治・大正生れの男子の名を調査するため、サイト「海軍人事名簿」を参考にする。太平洋戦争の指揮官であれば、だいたい明治10年から大正5年までに生れた男子である。

 

吉田善吾大将 (明治18年生れ)
野村留吉少将 (明治29年生れ)
折田善次少佐 (明治43年生れ)
杉山忠嘉少佐 (明治45年生れ)

 

次に現代の男子名を調査するためプロ野球名鑑を参考にし、無作為にひきだす。

 

大輔 大樹 直樹 正樹 雅樹 春樹 直人 真人 拓也 智之 佑太 俊介 健太 康平 浩二 憲司 克彦 翔太 勇紀 隆太 翼 祐輔 裕也 祐樹

 

名を見るだけで明治~大正に生れた人か、昭和に生れた人か、およそ区別できる気がする(もちろん一郎、太郎では無理だが)

 

つまり明治・大正の名はやや古くさく感じられるからである。現在の名からはフレッシュな感じをうける。だがこのようなフレッシュな感じというのがいつまで続けることができるのかわからない。センスの話である。たとえば男子の名で使われなくなった漢字として「吉」「助」「忠」「善」などがある。女子でも「貞」「富」などである。貞子、富江などホラー映画の影響があるのかもしれない。「善」や「忠」など本来は立派な漢字であるのに嫌われる理由は、忠義、忠臣、善行、善人が修身道徳のような堅苦しい感じがするからであろうか。日本にはこのように顕著な名前の変遷があるが、欧米にそのような傾向がみられないのはなぜだろうか。

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