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2023年5月 7日 (日)

古代の枕

Photo_2   日本人はいつ頃から枕なしでは眠られぬようになったのだろうか。縄文人や弥生人が枕で寝ていたという話はあまり聞いたことがない。万葉人は枕して寝ていたことは確実である。「麻久良」(まくら)という語が万葉集に見える。それより以前の古墳時代にも石製の枕が出土(実際に使用したものでない)しているから、おそらく卑弥呼は枕をして眠っていたかもしれない。枕をして寝る風習も中国から伝えられたものであろう。「木枕」(こまくら)とか「草枕」(くさまくら)などが用いられた。木枕には黄楊(つげ)、朴(ほお)、杉(すぎ)、桑(くわ)などが使われ、草枕には菅(すげ)、茅(かや)、菰(こも)、藁(わら)、篠(しの)などが用いられた。江戸時代から用いられる木枕は「垜(あずら)まくら」とも言われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年5月 5日 (金)

「鯉のぼり」の風習

0000231_2  甍の波と 雲の波

 重なる波の 中空を

 橘かをる 朝風に

 高く泳ぐや 鯉のぼり

     *

 開ける広き その口に

 舟をも呑まん さま見えて

 ゆたかに振るふ 尾鰭には

 物に動ぜぬ 姿あり

     *

 百瀬の瀧を 登りなば

 忽ち龍に なりぬべき

 わが身に似るや 男子(をのこご)と

 空に踊るや 鯉のぼり

 

 男の子のいる家では、5月5日に「鯉のぼり」をあげたりするが、近年少子化のせいか、都会ではあまりみられなくなったような気がする。この風習が生まれたのは江戸時代といわれている。当初は、武士の家で、戦国時代より陣地の目印として立てられた「吹き流し」や、旗指物などとして使われた「のぼり」を飾るしきたりがあった。しかし、これらを飾ることは武家にしか許されていなかった。そこで、江戸の庶民たちはこれに対抗し、鯉の形をした吹き流しを空に泳がせて節句を祝うようになったのだ。鯉は古代中国の「登竜門伝説」に因むとされ、男の子の立春出世を願う気持ちが込められている。

 

 

2023年5月 3日 (水)

近代社会を作り上げたコーヒーの歴史

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 17世紀のロンドン・コーヒーハウス

  一杯のコーヒーなり紅茶を傍らにおいて過ごす時間は、私たちの1日の中で、特別に美しい時間といえるのではないだろうか。もともと西洋人は、水以外の非アルコール飲料は知らなかった。では世界で一番最初にコーヒーを飲んだのは誰なのだうか?

 コーヒーの発祥地はエチオピアでコーヒーの液汁を飲んだのが始まりですが、実を煎じて飲むことを考えついたのは、5~9世紀のアラビア人だといいます。すくなくとも13世紀頃には、イスラム世界では今日のような焙煎した豆が用いられていたようだ。1554年にはトルコのコンスタンチノープルにコーヒー店が誕生した。16世紀後半に、トルコで愛飲されていたカフヴェ(Kahve)がヨーロッパに伝わったものである。17世紀にはヴェネチアやロンドンに広まった。1650年、オックスフォードに作られた「ジェイコブス」がイギリス最初のコーヒーハウスといわれる。その2年後、アルメニア人バスクァ・ロゼがロンドンに簡素なコーヒー・ハウスを開業して評判をとり、その後続々とコーヒー・ハウスが誕生した。30年後にはロンドン市内だけで、その数3000軒にのぼったといわれる。1763年フランスでドリップ式のコーヒーが考案された。

   今日の世界的な用語、コーヒー(coffee)やカフェー(cafe)などはトルコ語から転化したもので、トルコへはアラビア語のカフワ(qahwa)から移されたものである。コーヒーに関する世界最初の記述といわれるものは、12世紀の医者アッ・ラージー(1149-1209)によるもので、彼は胃の薬として、エチオピアに原生するブンの種実から煮出して汁液「ブンカム」を使用していた。豆をいることによって苦味や香りの豊かな飲み物としたのは13世紀中頃から、飲酒の許されないイスラーム教徒のあいだでは、日常生活に欠かせない飲み物として広まったらしい。そしてその頃には、これを「ブンカム」と呼ばず、酒の名の一つを借りて「カフワ」と呼ぶようになった。これがトルコ語の「カフウェ」になり、17世紀のヨーロッパで「カフェ」あるいは「コーヒー」と呼ばれるようになったのである。ルイ14世とナポレオンはコーヒーの愛好家で知られる。イギリスのコーヒーハウスは男性しか入れなかった。やがて女性たちは紅茶を飲むようになり、19世紀中頃からアフタヌーンティーの習慣へと発展する。

   日本にコーヒーが伝わったのは、室町時代でキリスト教の布教で渡ってきたポルトガル人やスペイン人が携えてきたと考えられている。より確かな説では、江戸時代の1780年代にオランダ商人が長崎の出島に持ち込んだとされる。コーヒーの味を初めて知った日本人はおそらく幕府のオランダ通詞であろう。コーヒーに、「珈琲」の漢字を最初に当てたのは、儒学者の宇田川榕庵(1798-1846)である。

 コーヒーが健康に与える影響については科学者たちが何年にもにわたって研究してきた。飲みすぎるとカフェイン依存症につながる一方、毎日適量飲むと心臓病のリスクが下がるという報告もされている。コーヒーの健康効果についてはいまだ謎が多い。DNA遺伝子が関係しており、からだにいい人と悪い人と、人によって違いがあるらしい。(参考:「サロンとコーヒーハウス」成瀬治『大世界史』13)

 

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2023年4月 5日 (水)

世界の墓

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 アーリントン国立墓地(米国ワシントン)

 

    国の数だけの風俗・習慣がある。とくに多種多様なのはお墓である。イスラム教はお墓がないといわれる。英語で言う墓地 graveyardは、たいていは教会の中庭に設けられている。おそよ17世紀頃からヨーロッパでは、教会の統制の下に、行なわれるようになってきた。通常、キリスト教国は土葬で、腐ると掘り起こして納骨堂に納められた。しかし、ペストやコレラなど伝染病の蔓延につながり公衆衛生上の問題から、お墓が都市から離れた場所に作られるようになった。19世紀のイギリスでは多くの共同墓地セメタリーcemeteryが建設され、共同墓地は先行した教会墓地と対照的な点が多い。米国ワシントンDCの国立アーリントン墓地で最も有名なのは、第35代大統領ジョン・F・ケネディのお墓である。 

 

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 イギリス・ウェールズの墓           沖縄の墓

2023年4月 1日 (土)

エイプリル・フール

Aprilfools 4月ばか、April Fool、万愚節。友人たちをかついで興じる日。この習慣の起源については定説はない。16世紀頃からフランスで始まった習慣とされる。フランス語でPoisson d'Avril(4月の魚)といい、この時期よく捕れるサバのことを指している。1564年にシャルル9世がいまの暦であるグレゴリオ暦にかえたが、なかなか浸透しない。そこである貴族が4月1日に公爵の屋敷でパーティーがあるという嘘の招待状を出したのがはじまりといわれている。民衆が王に反発して、4月1日を「嘘の新年」として位置づけ、バカ騒ぎをするようになったという説もある。だが「4月ばか」の慣習は18世紀初めまではそれほど一般に広まらなかった。イングランドでは、もっとも好まれた遊びは「無駄なお使い」に出すことであり、Aが犠牲者をBのところに使いに出すと、Bはさらに彼をCに送る。こうして犠牲者は、気づくまであちこちにやられるのである。北欧のスウェーデンでもエイプリルフールは盛んである。April skamt  アプリール・ファムト(四月冗談)という。一説によるとエイプリルフールは、キリストの死んだ日と関係するといわれる。キリストが死んだ日は春分の日(ニサン)の新月の日から14日たった日といわれる。(4月1日)

2023年3月23日 (木)

たばことマヤ文明

 世界で一番最初にたばこを吸ったのは誰なのだろうか?たばこを手にしながら、誰しも一度は考えたことがあるのではないだろうか。その答えを探るには、どうやら古代マヤ文明の時代にまでさかのほる必要があるようだ。メキシコにあったマヤ文明の都市遺跡パレンケの「たばこを吸う神」(十字架の神殿)には、なんとタバコを吸う神の姿が描かている。これが人類とたばこのつながりを示す最古の資料だといわれる。少なくとも7世紀末ごろ(692年)と考えられる。古代マヤの人々は、神へ願いごとをしたり神のお告げを聞いたりするときに、たばこの葉をいぶした。たばこの葉から立ちのぼる「けむり」と「香り」を天上の神へささげていたのだ。当然、神がお喜びになるという考えから、そうしたのであろう。神と人との交信の道具としてパイプや葉巻などが作られた。

2023年3月 8日 (水)

桐原の藁駒まつり

Photo_4 長野県桐原は郷土玩具「わら馬」で知られている。「わら馬」は古く「わら駒」といわれ、「龍馬」を形どったもので「神駒」ともよばれている。生産と繁栄を祈願し、毎年3月8日に長野市郊外の桐原牧神社の春祭りにわら駒を奉納する。藁で作った郷土玩具が伝統民芸品として、駅売店で販売されている。

2023年3月 3日 (金)

男雛と女雛の並べ方は?

 本日3月3日はひな祭り。気になるのは、最上段に飾る男雛と女雛の位置だ。伝統的な京式ではひな壇に向かって右側が男雛であった。雛人形の男雛、女雛の配座はどちらが上席か意見が分かれる。現在、商品として展示されている雛人形を見ると、向かって左側に男雛、右が女雛が配置されているのが一般的である。

 

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京阪風古今雛屏風飾り(江戸後期)

 ひな人形の語は江戸時代後期に生まれたが、起源は古く平安時代の貴族の子どもの人形に「ひいな」があったが、この遊びが伝わったものであろう。並べ方は江戸時代までは、男雛は向かって右側であった。これは古来日本では陰陽五行説に由来して、左側(向かって右)を上席とされてきたため、京風の時代雛では男雛が左側(向かって右)となっている。だが明治24年に全国の学校に置かれた御真影では、外国の皇室を見習って天皇は向って左であった。大正から昭和初め頃、三越や高島屋などデパートがこれらにならって男雛と女雛の配座を入れ替えた。東京雛人形卸商組合が、それにならい、またたく間に全国に広がり、今日に至っている。関西では、伝統的に京風を守り、向かって右に男雛を配置することもまだ残っている。では、左右どちらに配置したらよいのか?さぞや悩まれる方も多いのではないだろうか。各家庭の今までのしきたり等で飾っていかれたらよろしいのではないでしょうか

2023年2月16日 (木)

案山子(かがし)の話

    農作物の鳥獣害を避ける手段は、およそ3種に分類できる。

1.農神や田の神を迎えて豊穣を祈るとともに、害を避けようとする方法で、神の依代の人形や神札を田畑に立てたり、注連を張り廻す。これを中部東海地方ではソメといい、静岡地方では山人(やまびと)、北陸近畿以西では脅(おどし)といっている。

2.悪臭のする物を畦畔に置いて、鳥獣を畏怖または嫌悪させる方法で、襤褸(ぼろ)・毛髪・魚の頭・獣肉などを焼いて串に挟んだり注連に下げたりする。これを一般に嗅(かが)しという。

Photo_5 3.物音を立てたり、鳥獣の死屍を吊し下げて畏怖させる方法で、人が大声で追うたり、水車・板木・空缶・空砲を利用したり、死屍を吊るしたり、その方法は近年の発案が極めて多く変化に富んでいる。山の添水(そうず)・ボットリというのは、水力による搗杵の音の利用名であり、夜追・猪追・鳥脅そのほか新案の名称も多い。現在ではこれらのものを総称して案山子(かがし)という。 かかしを「案山子」という字をあてる理由は判然としない。元々中国の僧侶が用いた言葉で、「案山」は山の中でも平らなところを意味し、「子」は人や人形のことだそうだ。かかしは、「鹿驚(かがせ)」の意から出たともいわれるが、一般には悪臭を発して鳥獣を追う「嗅(かがし)」が語源とされる。

参考までに世界の「かかし」の単語を列挙する。

scarecrow スケアクロウ 英語

 

epouvantail エプヴァンタイユ 仏語

 

Vogelscheuche フォーゲルショイヒェ 独語

 

spaventapasseri スパヴェンタパッセリ 伊語

 

espantapajaros エスパンタパッハロス 西語

 

スキャフトロ  ギリシャ語

 

ブーガラ    ロシア語

 

フォルミード formido   ラテン語

 

ダオツァオレン 稲草人 中国語

 

ホスアビ 韓国語

 

 鳥取県八頭町では案山子を使った町おこしに取り組んでいる。2013年には世界13ヵ国の案山子を集めた「世界かかしサミット」が開催された。韓国やロシア、モロッコなどさまざまな国の案山子が展示された。   (参考:『民俗学辞典』東京堂 1951年)

 

 

2023年2月11日 (土)

もうすぐバレンタインデー

Photo   バレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は日本だけとよくいわれる。この時期だけで、年間売上高の約3割が売れるという。広辞苑に拠ると、バレンタインデーにチョコレートを贈ることは「1958年頃より流布」したとある。しかしバレンタインデーにチョコレートを贈る習慣は日本特有のものではなく、1868年イギリスのチョコレート会社キャドバリー社がギフト用チョコレートボックスを製造し世界に広まったらしい。日本では神戸モロゾフ社が英字新聞「ザ・ジャパン・アドバタイザー」(1936年2月12日)の広告を出した。1958年2月には新宿の伊勢丹でメリーチョコレートが日本で初めてのバレンタインデーのチョコレートを販売した。

Bill3  1960年からは森永製菓がバレンタインデーの宣伝を大々的にするようになり、1970年代には女性が男性に愛情の告白としてチョコレートを贈ることが浸透した。だがギフト商品はチョコレートだけにこだわらず、ハンカチ・ネクタイなどの小物、ウィスキー・シャンパンなどお酒、香水などギフトとして喜ばれる。(St.Valentine's day,chocolate)

 

 

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