新しき年の始の初春の今日降る雪のいや頻(し)け寿詞(よごと)
大伴家持
年の瀬、迎春をひかえて買い物で忙しい。元日の朝、正月のお祝い膳にかかせないのが「おせち料理」である。「おせち」とは御節供(おせちく)のつまったもので、昔は五節供の節目に用いられる料理のことをいったが、次第に正月の料理だけをいうようになった。正月の祭事の食物に里いものような穀類を特別重要視する習慣は縄文時代からの穀類起源神話からもうかがえる。インドネシアの神話に、ハイヌウェレという少女の死体から芋などの作物が生まれ、人びとの主食となったという神話がある。ドイツの学者アドルフ・イエンゼン(1899-1965)はこれを「ハイヌウェレ型神話」と呼び世界に同類の神話が存在するとした。日本の記紀にみられるオオゲツヒメも縄文時代の中期に南方から渡来した可能性が高いと学者は説く。おせち料理は年神様にお供えして、家族の繁栄や、多産、豊年、長寿、家内安全のなどを願う、縁起物の家庭料理である。
「数の子」は、にしんの卵だが、「二親・にしん」から、たくさんの子がうまれてめでたいと、子孫繁栄の縁起をかついでいる。古くからおせちに使われる。
「田作り」は、ごまめともいい、かたくちいわしのの幼魚を炒って飴煮したもの。昔たんぼの肥料に使ったところ、たいへん米がとれたため、豊年万作を祝う農民が正月に田作りを食べるようになった。
「黒豆」は、一年中の邪気を払い無病息災を願って屠蘇で祝うが、そのときに用いられる祝い肴のひとつ。黒豆(くろまめ)・まめ(丈夫)に暮らせるようにという縁起に因んだもの。
「昆布巻き」は、昆布と「よろコブ」をかけて幸福を願う。
「海老」は長いひげをはやし、腰が曲がるまで長生きすることを願って使われる。
「鯛」は、鯛と「めでタイ」をかけて幸福を願う。
「くわい」は芽が出る事から「出世しますように」という縁起物です。
「れんこん」は沢山の穴が開いていることから「先が見える・先の見通しが良い」とされる縁起物です。
「たたきごぼう」は根がしっかり根付くことから「家の土台がしっかりするように」とされる縁起物です。
「棒だら」は鱈腹(たらふく)食べられるという意味で腹=福から来ています。
「栗きんとん」金団と書き、その色から黄金・財産に見たてた豊かな1年を願う料理です。
「屠蘇」とは魏の名医華佗の処方という、年始に飲む薬・屠蘇散に由来する。屠蘇散を入れて、酒・みりんに浸して飲む。一年の邪気を払い、齢を延ばすという。平安時代から行われている。(1月1日) 参考:『江馬務著作集5』 中央公論社 P191~196
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