無料ブログはココログ

2023年8月10日 (木)

字形類似の漢字と誤字の話

   「焉馬(えんば)の誤り」という言葉がある。漢字には多くの種類があり、字形がよく似ている字がある。「焉」と「馬」とは字形が似ていて間違いやすいことから文字の誤りのことを意味する。箱根駅伝のテレビ中継のテロップ。「たすき」を「欅」と誤って表示。「襷(たすき)」と「欅(けやき)」の漢字はつくりが同じで間違いやすい。共通入試テストで「科挙」を「科拳」と誤字。「勾配」を「匂配」と誤字。NHKニュース「おはよう日本」のテロップ。コロナ禍をコロナ渦と表示。「禍」を「渦」と誤る。

    林修先生がNHKで「雹(ひょう)」という漢字を間違える。「雨」かんむりの下の字が「包」となっていた。「包」と「苞」は似ている。「同胞」と「雹」も要注意!「包」「泡」「飽」「港」は「己」、「雹」「鮑」「鞄」は「巳」。天皇皇后両陛下に対する「国民代表の辞」を読み上げる際、安倍首相は「願って已みません」が読めなかった。痛恨の極みである。

巳 シ み

已 イ すでに・やむ

己 キ・コ おのれ

 これらの文字は、とくに蛇と糸すじの象形で字形が似ているので紛れやすい。「土」と「士」、「未」と「末」、一画の長さでまったく異なった意味の文字になる。むかし新聞などで「天皇陛下」を「天皇陸下」を誤字したことがあった。

    とかく漢字には紛らわしいものが多い。「微」と「徴」。「門」と「問」。「紛失」の「紛」と「粉」。「牛」と「午」。「宣」と「宜」。「壁」と「璧」。「樋」と「桶」。「冒」と「昌」。「欧」と「殴」。「萩」と「荻」。「刺(し、名刺)」と「剌(らつ、溌剌)」。「貪」と「貧」も似ているが、「貧」は、分+貝、貧しいという意味。「貪」は、今+貝、むさぼるという意味で、まったくの別字である。「弊」と「幣」。「弊」は、破れてボロボロになる、つかれる。「弊害」。一方、「幣」は神に供える絹、客への贈り物、宝物、おかねといった尊いものを表す字。「貨幣」。「冷」と「泠」 にすいとさんずい。

    杮落しの「杮」と「柿」。崇徳天皇の「崇」と「祟(たたり)」。[鳥(とり)」と烏(からす)」。「己(き)」と「已(やむ)」「巳(み)」、「戊(ぼ)」「戌(いぬ)」「伐(ばつ)」「戍(じゅ)」「戎(えびす)」「戉(まさかり)」が紛らわしい。紛らわしい漢字の覚え方として、「瓜にツメあり、爪にツメなし。牛にツノあり、午にツノなし」という歌がある。

     「僕」「撲」「樸」も紛らわしい漢字の1つ。これらはみな「ボク」と読む同音異字。僕は「しもべ」という意味で熟語には「家僕」がある。撲は「うつ」という意味で熟語は「撲滅」がある。樸は「切り出したままの材木」という意味で「朴」と同じで「樸訥」(飾り気がなく、口べた)という熟語がある。

 「嬴」「贏」「蠃」「羸」「臝」という漢字もある。「嬴(エイ)」は秦の姓。「贏(エイ)」は儲ける、勝つの意味。「蠃」は螺(ラ)の本字。「羸(ルイ)」は痩せるの意味。「臝(ラ)」は虎、豹のたぐい。このほかに、「驘」は騾の異体字もある。

 儒家の「荀子」と「筍(たけのこ)」。「壁ドン」と「完璧」。

「莽」と「葬」。莽の字義は「犬が隠れるほどの草むら」で「犬」の字が使われるが、「葬式」などで使われる字は「死」である。

 「綱」と「網」。両国国技館の住所は「横綱」ではなく「横網(よこあみ)」にあります。「綱」と「網」は字形が似ているため、間違えやすい。
 「甲冑」の「冑」と「胄裔(ちゅうえい)」(子孫)の「胄」も大変紛らわしい。「かぶと」の意の「冑」は、下の二が冂につかないが、血筋の意の意の「胄」は両側の線にくっついている。つまり、下は「にくづき」の月である。ついでに言うと、「胃(い)」は、下は血筋の「胄」と同じだが、上の中棒が突き出ていない。

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年3月23日 (木)

「十六島海苔」なんと読むでしょうか?

 読めたらすごい難読漢字の読みを出題します。漢字の勉強は毎日「兀兀」(コツコツ)やることです。

   ↓

   ↓

   ↓

答え:「十六島海苔」難しい読み方の食品の一つである。「うっぷるいのり」と読む。十六島は、十六権現が人間の姿をかりて現れるとされていた地で、水底に良い海苔がある。島根県太田市の三瓶山に雪が降って、この池に影が映るときに、この海藻をとればよいという言い伝えが残る。▽「女三人寄れば姦しい」女性はおしゃべりだが、寄り集まるとさらにうるさい、という意味だが、なぜ三人か。「姦(かしま)しい」という字が「女」の字三つからなっていることに通わせて言ったものらしい。この漢字、なんと読む?

 

1 蚯蚓

 

2 守宮

 

3 

 

4 

 

5 栄螺

 

6 章魚

 

7 

 

8 若布

 

9 萱草

 

10 枳殻

 

11 蛞蝓

 

12 海月

 

13 公魚

 

14 杜若

 

15

 

16 蜀魂

 

17 雲丹

 

18 

 

19 海鼠

 

20

 

21

 

22 這般

 

23 剴切

 

24 真秀

 

25 孑孑

 

26 飛蝗

 

27 天牛

 

28 螽斯

 

29 壁蝨

 

30 蝦蛄

 

31 熨斗

 

32

 

33 覆盆子

 

34 胡獱

 

35 木賊

 

36 素面

 

37 羚羊

 

38 裾濃

 

39

 

40

 

41 水雲

 

42

 

43 縷蛄

 

44 牛蒡

 

45 淪落

 

46 虎杖

 

47 忝し

 

48 楸

 

49 柳葉魚

 

50 菟葵

 

51 鴇

 

52 雲脂

 

53 白膠木

 

54 撥

 

55 竜髭菜

 

56 混凝土

 

57 齷齪

 

58 瞽女

 

59 自然薯

 

60 朳

 

61 散蒔く

 

62 愛猫

 

63 微睡む

 

64 如雨露

 

65 萵苣

 

66 匕

 

67 蟹眼

 

68 占地

 

69 巻繊汁

 

70 鼈

 

71 倦ねる

 

72 小火

 

73 嚏

 

74 満俺

 

75 縺れる

 

76 琢く

 

77 怠い

 

78 牢い

 

79 迸り

 

80葡萄茶

 

81木通

 

82撮む

 

83玳瑁

 

84灼か

 

85諳んじる

 

86祝言

 

87 可成

 

88鶏冠手

 

89烏芋

 

90苧環

 

91咱夫藍

 

92蕺草

 

93紫苑

 

94雛罌粟

 

95盗汗

 

96鹹

 

97五加

 

98仏掌薯

 

99浣熊

 

100石決明

 

101豌豆

 

102打欠

 

103 馬大頭

 

104鹿尾菜

 

105醤蝦

 

106歩荷

 

107 郎女

 

108 薯蕷芋

 

109 今将

 

110 鯨波

 

111 羊蹄

 

112 泛子

 

113 鵲

 

114 臈纈

 

115 花椰菜

 

116 穿る

 

117戮力

 

118夢現

 

119裃

 

120蹈鞴

 

121炊爨

 

122陸な

 

123譫言

 

124棒棒鶏

 

125海鼠

 

126繁縷

 

127塒

 

128糸葱

 

129錺

 

130枕頭

 

131藻

 

132膝下

 

133柳葉魚

 

134憖いに

 

答えはこの項の末尾に

  ↓

  ↓

  ↓

1みみず 2やもり 3いたち 4むじな 5さざえ 6たこ 7ぶり 8わかめ 9わすれぐさ 10からたち 11なめくじ 12くらげ 13わかさぎ 14かきつばた 15ひわ 16ほととぎす 17うに 18しじみ 19なまこ 20まぐろ 21かじか 22しゃはん 23がいせつ 24まほ 25ぼうふら 26バッタ 27かみきりむし 28きりぎりす 29だに 30しゃこ 31のし 32ともづな 33いちご 34とど 35とくさ 36しらふ 37れいよう 38すそご  39そひ 40インチ 41もずく  42ふいご 43けら 44ごぼう 45りんらく 46いたどり 47かたじけなし  48ひさぎ  49ししゃも 50いそぎんちゃく 51とき  52ふけ 53ぬるで 54ばち  55アスパラガス 56コンクリート 57あくせく 58ごぜ 59じねんじょ 60えぶり 61ばらまく 62あいびょう 63まどろむ 64じょうろ 65チシャ 66さじ 67かいがん 68しめじ 69けんちんじる 70すっぽん 71あぐねる 72ぼや  73くさめ  74マンガン 75もつれる 76みがく  77だるい  78かたい 79とばっちり 80えびちゃ 81あけび  82つまむ 83たいまい 84あらたか  85そらんじる 86しゅうげん  87なるべく  88かえるで  89くわい  90おだまき 91サフラン 92ドクダミ 93シオン 94ヒナゲシ  95ねあせ  96しおけ  97うこぎ  98つくねいも  99あらいぐま 100あわび 101えんどう 102ぶっかき 103オニヤンマ 104ひじき 105あみ 106ぼっか 107いらつめ 108とろろいも 109いまはた 110とき  111ぎしぎし 112うき 113ふじまめ 114ろうけつ 115カリフラワー   116ほじる 117りくりょく 118ゆめうつつ 119かみしも  120たたら  121すいさん 122ろくな 123うわごと 124バンバンジー 125このわた 126はこべ 127ねぐら 128あさつき 129かざり 130ちんとう  131もやし 132しっか 133ししゃも 134なまじいに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2023年3月 6日 (月)

「区区」あなた読めますか?

区区

  この漢字よめますか?解答は「まちまち」です。それぞれが同じでないこと。

 

涸魚

かくぎょ。水のない所にいる魚。今にも死にそうな状態、必死に助けを求めている状態などのたとえ。こぎょ。

 

雀斑

ヒントは、元気で明るい赤毛のアンやキャンディ・キャンディにも顔面に斑点があるけど気にせずチャームポイントにしている。

答えは

「そばかす」。中国語も「雀斑」と書きます。

 

 

 

2023年3月 3日 (金)

カタカナ語を漢字で表現すると

Duola   中国ではどんな外来語でも漢字オンリーで充てている。例えば、阿司匹林(アスピリン)、電脳(コンピューター)。アンパンマンは「麺包超人」。トトロは「豆豆龍」。ミッキーマウスは「米老鼠」。ポパイは「大力水手」。ドラえもんは、むかしは「機器猫」だったが、1997年以降は「多拉A夢」と表記されている。

   飲み物。コーヒーは珈琲ではなく咖啡。烏龍茶(ウーロン茶)、普洱茶(プーアール茶)、奶茶(ミルクティー)、可可(ココア)、果汁(ジュース)、柳橙汁(オレンジジュース)、啤酒(ビール)、威士忌酒(ウィスキー)、礦泉水(ミネラルウォーター)。

   動物。大熊猫(ジャイアントパンダ)、小熊猫(レッサーパンダ)、子守熊(コアラ)、紅鶴(フラミンゴ)、更格盧(カンガルー)、海狸、河狸(ビーバー)、海豹(アザラシ)、膃肭臍(オットセイ)、食蟻獣(アリクイ)、倉鼠(ハムスター)、穿山甲(センザンコウ)、抹香鯨(マッコウクジラ)。石竜子(トカゲ)。

 その他。易餓病(過食症)。汽油(ガソリン)。

   辞書に載っていない卑猥な俗語を紹介する。セクハラのことは「性騒攪」。そのなかで「おさわり」は「咸猪手」という。

 

1389595379942

2023年2月20日 (月)

芥川龍之介とガンダーラ

 芥川龍之介の名作「蜘蛛の糸」の主人公の名前は、「犍陀多(かんだた)」である。「犍」というのは日本では普段見慣れない漢字であろう。なぜ「犍陀多」と名付けたのだろうか。「犍」という漢字はおそらく中国人ならよく知っているだろう。中国歴史地理上では「犍為郡」がある。漢の武帝建元6年(前135)犍為郡が設置された。隋代まで続いた。日本では「けんいぐん」と一般によむ。漢字本来の意味は「きんきりうし」つまり「去勢された牛」という意味である。有名なペシャワール地方のガンダーラは5世紀から7世紀にかけて、法顕・宋雲・玄奘・慧超など入竺僧が必ず訪れており、漢字表記すると「犍駄羅」(法顕伝)「乾陀羅」(宋雲行記)「犍駄羅」(大唐西域記)といろいろ書かれている。芥川龍之介の主人公の名前「犍陀多」は何に着想を得たのか。「蜘蛛の糸」は芥川の完全な創作ではなく、元ネタがある。ポール・ケーラスが米の雑誌「オーブンコート」に1894年に発表した「カルマ」という話である。それを鈴木大拙が「因果の小事」として1898年に翻訳した。はたして芥川龍之介は「ガンダーラ」の古代仏教文明の由来を知っていたのであろうか?犍陀多の漢字は鈴木が当てたものを芥川はそのまま採用したと思われる。ガンダーラ美術の紹介は国際的には1905年のフランスのフーシェ(フッシェ)が提唱したことに始まるが、芥川が「蜘蛛の糸」を執筆した1918年(大正7年)頃には日本にも一部東洋史家によって知られているので、芥川がガンダーラを認識していたという可能性も少しは残されている。芥川の何かの記事で子供の頃の愛読書は西遊記が第一だったとあるのを思い出した。もしかしたらガンダーラでも新発見の新聞記事などを読んで「犍」の字に惹かれたのかもしれない。大正8年以降は仏教美術専門誌などにガンダーラ研究が盛んになってきている。芥川龍之介とガンダーラ美術の新知識の関係は未だ謎である。

 

2023年2月 5日 (日)

「叺」 何て読むの?

何て読む? 答えは

叺 かます。藁むしろを二つ折にして作った袋。主に穀物・塩・石炭などを入れるのに用いる。

 

足掻(あがき)

 

総角(あげまき)

 

家苞(いえづと)

 

転寝(うたたね)

 

囈語(うわごと)

 

晩稲(おくて)

 

恩愛(おんない)

 

叺 (かます)

 

苟且(かりそめ)

 

権柄(けんぺい)

 

紙縒(こより)

 

遮莫(さもあらばあれ)

 

倭文(しず)

 

掏摸(すり)

 

佝僂(せむし)

 

為体(ていたらく)

 

鯨波の声(ときのこえ)

 

破落戸(ならずもの)

 

只管(ひたすら)

 

北叟笑む(ほくそえむ)

 

水分(みくまり)

 

兎唇(みつくち)

 

翻筋斗(もんどり)

 

鳩尾(みぞおち)

 

魚子(ななこ)

 

雲吞(ワンタン)

2022年11月27日 (日)

「草枕」漢字考 1

2011062419570000   余は西洋画家。非人情の旅に出て、宿で那美というファム・ファタールの女に出会う。しかし女の顔を画にするには何かが足りない。ラスト汽車を見送る瞬間、那美の顔に「憐れ」をみてとる。「それだ!それだ!それが出来れば画になりますよ」と余は言った。

    初めて読んだのが中学1年生のとき。以後、何度も断片的に読み返す。難しい漢語があるので、全てを理解したわけではないが、漱石を通じて漢語に興味を覚えた。「坊っちゃん」の平明体に対して、「倫敦塔」、そして「虞美人草」に至る浪漫的な文体である。また「草枕」には漢籍の大家、漱石の面目躍如たるものがある。一節の「峠道」の冒頭部分から難読語をひとつ挙げてみる。

璆鏘(きゅうそう)

「璆鏘の音は胸裏に起こる」。璆は玉のふれ合ってなる音。鏘は金石の響き。ともに美しい音調の意。ここでは立派な詩の意味。

 

(femme fatale)

 

 

2022年10月29日 (土)

「白夜」びゃくや、はくや、どちらでも正しい

  漢字につまわる話、いろいろありますよね。自分が正しいと思っているのに、異なる読み方をされると、戸惑いを感じます。フリーアナウンサーの有働由美子が買い物をしていると、店員さんが「ろうほのお茶があります」と勧められた。「老舗」(しにせ)ではないかと思ったが、このことをラジオで話すと、リスナーから「ろうほ」とも読みます、と多数のメールがラジオ局におくられた。あとで国語辞書を引くと載っていた。世論を「せろん」と読むか「よろん」と読むかの類である。「白夜」も「びゃくや」「はくや」どちらでも正しい。でも欠伸(あくび)を「けっしん」と読むと意味が少し違いので注意しよう!。「伸」に「のばす」の意味があるので、欠伸(けっしん)は「あくびと背のび」の意味になる。

   宮沢洋一経済産業相が川内原発を「かわうち原発」と言い間違えたことが問題になったことがある。鹿児島に「仙台よりも有名でない川内」といわれた市があった。紛らわしいので2004年に薩摩川内市と改称された。日本には漢字が同じで読み方が違う地名がいくつかある。とくに紛らわしいのが「川内」。青森県には川内町(かわうちちょう)が存在するが、愛媛県川内町、福島県川内村は「せんだい」と読む。

 

 

2022年9月21日 (水)

難解漢字「鬱鬱」

   檸檬、薔薇、瑠璃、麒麟など、読めるけど書けない漢字二字の熟語が好き。靉靆(あいたい)、鸞鏡(らんきょう)、龍龕(りゅうがん)、蘭麝(らんじゃ)、燦燦(さんさん)。鬱鬱は58画。「頑魯(がんろ)」とは、頑固でものの道理をわきまえないこと、頑なで愚かな様子をいう。

 

 

 

2022年8月29日 (月)

「焼肉定食」は四字熟語ではない

Photo1342   本日は「焼肉の日」。「焼肉定食」は四字熟語だろうか?「希死念慮」という漢語がある。意味は「死にたいという気持ち」をいう。これは心療内科などでよく使われる用語で一般の辞書には見当たらない。これは四字熟語だろうか。 広辞苑には、第5版まで「四字熟語」の項目はなかった。第6版で「四字熟語」の項目が新設されて「漢字四字の熟語や成語」との定義がなされた。つまり四字熟語は四字漢語に近い意味を持つ。ただし成語、つまり「古人がつくり、後人によく引用される語句」という由来が要件の一つである。例えば「百発百中」(戦国策)「百戦百勝」(周の鄧析子)は四字熟語だが、「三球三振」「農山漁村」「天地無用」は四字熟語ではない。このような問題点から四字漢語という表現をすれば、漢字四字の熟語はすべて含むことができる。角川書店から「四字漢語の用法」という本が出版されている。例えば次のような語は四字漢語に含めない。①助詞を入れて読むもの「多勢無勢」②成句の中で離れるもの「鶏口牛後」③普通は用いないもの「天長地久」④複合しただけのもの「焼肉定食」「為替相場」「児童虐待」「介護保険」「高速道路」「内閣改造」「偶像崇拝」「決選投票」「戸別訪問」「巨乳美人」「殺人予告」「打倒巨人」「向都離村」などなど。

   「四字熟語」の定義は案外と難しいものである。ここでは代表的な四字熟語をあげておこう。

悪戦苦闘 阿鼻叫喚 意気軒昂 医食同源 一石二鳥 一蓮托生 以心伝心 一日三秋 一望千里 一騎当千 因果応報 温故知新 偕老同穴 格物致知 臥薪嘗胆 眼光紙背 危急存亡 起死回生 九牛一毛 虚心坦懐 金科玉条 空前絶後 君子豹変 軽薄短小 月下氷人 乾坤一擲 甲論乙駁 故事来歴 呉越同舟 砂上楼閣 三位一体 四面楚歌 出処進退 春秋筆法 心頭滅却 精耕雨読 大器晩成 多岐亡羊 天下泰平 同床異夢 内柔外患 馬耳東風 波瀾万丈 百家争鳴 百鬼夜行 貧者一灯 風林火山 不言実行、夫唱婦随 不撓不屈 附和雷同 本末転倒 旁若無人 矛盾撞着、無我夢中 明鏡止水 明眸皓歯 明哲保身 夜郎自大 優柔不断 羊頭狗肉

「明哲保身」とは、道理にしたがって事にあたり、身をまっとうすることで、古来、ひろく事理に通じて深く事物を極め、その知恵によって出所進退をあややまらなかった賢人の処世法をたとえるときに、しばしば使用されてきたことばである。「詩経」の「大雅」「烝民」篇の中の「既にして明且哲、以て其の身を保つ」という二句がことばの語源とされている。この詩は周代の賢相仲山甫をたたえたもので、その心はつねに謹しみてうやうやしく、邦国の正邪善悪をあきらかにし、明哲保身、朝夕おこたらず天子につかえている、と歌いあげている。

(注)「一日三秋」はふつう「一日千秋」というが、漢文では、多を表わすときにも三を用いる。(「岩波四字熟語辞典」、8月29日)

より以前の記事一覧

最近のトラックバック

2023年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30