「じゃんけん」の歴史は意外に浅く、近世になってから誕生したものといわれている。最初は中国から入ってきた豁拳(かつけん)である。向かい合って2人が、互いに右手の指を出し、すばやく屈伸させ、数を数え、2人が伸ばした指の合計を言い当てた方が勝ちになる遊戯で、寛永頃に長崎に入ってきた。のち三つのものが互いに強弱があって三すくみとなる「じゃん拳」「虫拳」「虎拳」「狐拳」が生まれた。ハサミのことを「チョキ」、中国語で「りゃん」、これが「りゃん拳」で訛って「じゃんけん」と呼んだ。狐拳のことを藤八拳(とうはちけん)ともいい、明治に入って非常にさかんになった。グー・チョキ・パーも日本語であるとする説が有力。
現代では世界中に広がったが、「じゃんけん」は欧米では順番などを決めるときは、硬貨を投げて決めることが多く、日本ほど一般的ではない。映画「007は二度死ぬ」(1967)では、日本的な雰囲気を出すためジェームズ・ボンドがじゃんけんをする場面がある。 じゃんけんは世界にいろいろな国にあるが、遊び方が少しすづちがう。ちがう指を使ったり、4種類や5種類も手の形があったりする。フランスはシゾー(はさみ)、ピエール(石)、木の葉(フュイユ)、ピュイ(井戸)の4種類ある。石とはさみでは、はさみを切れなくするので石が勝ち、井戸は、石とはさみを沈められるので石とはさみに勝ち、木の葉は、石を包み井戸をふさぐことができるので石と井戸に勝つ。
日本のテレビでは「じゃんけん」がよく登場する。「最初はグー!ジャンケンポン」という掛け声も志村けんの影響による。幕末の横浜の遊郭で流行った踊りが、松山で野球拳となり、お座敷芸となり、流行歌「三味線ブギ」「野球けん」(1954)でブーム、そして「コント55号の裏番組をぶっとばせ」(1969)で子どもまで広がった。現在コンピュータゲームにも「じゃんけん」をして勝つと美女が服を脱ぐというソフトがあるらしい。このことを知った萩本欣一は2005年に松山市を訪問し、謝罪している。第3回AKB48じゃんけん大会で島崎遥香が優勝しセンターを射止めたが、ずっとチョキで勝ってきたことからヤラセの出来レースとネットで批判が殺到した。一方プロレスのようなエンターテイメントだからヤラセでもOKとする擁護派もいる。ともかくも日本は「じゃんけん文化」である。「ジャンケン、メンコも拳のうち」という。確かにむかしのメンコの裏には必ず「グー、チョキ、パー」のいずれか1つの絵が描かれていた。英語で「じゃんけん」は scissors-paper-rockという。(Sepp Linhart)
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