這魔不勉強者
あるクイズ番組をみてると東大出の有名人を超インテリとか教養人とか、とても持ち上げていた。だが正答率は悪かった。若い頃は秀才だっかもしれないが、60歳をすぎて知性に大分衰えがみえる。その点では夏目漱石はたいへん面白い人物である。文部省が漱石に文学博士の称号を贈ると伝えたのに対して、漱石は「自分には肩書きは必要ない」として辞退した。江戸の伝統と西洋の新しい学問とが融合した明治という新しい時代がなければ出現しないであろう。「私の経過した学生時代」という一文を読む。冒頭から見知らぬ漢字に出会う。「私の学生時代を回顧してみると、ほとんど勉強という勉強はせずに過ごしたほうである。したがってこれに関して読者諸君を益するような斬新な勉強法もなければ、おもしろい材料も持たぬが、自身の教訓のため、つまり這魔不勉強者は、こういう結果になるという戒を、思い出して述べてみよう」 まことにユーモラスな感じの書き出しであるが、平易な文章でもある。ただ「這魔不勉強者」という漢語のインパクトがある。「這魔」(しゃま)とは現在の広辞苑には出ていない漢語であるが、漢和辞典には「このように、こんなに」とある。
「吾輩は猫である」には「這裏の消息は会得できる」とある。「這裏(しゃり)」とは、「この中、このうち、この間」の意味。
「這箇」(しゃこ)という漢語があって「これ」「この」の意、中国語の口語表現に由来し、禅僧の間で用いられた。宋代に「遮個」「適箇」と書いたが、この「遮」「適」の草書体を「這」と混同したことから我が国では「這箇」という漢語が生じた。「這魔」も禅学の造詣が深い漱石ならではの表現である。(2月21日)
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