文豪と温泉
むかしの作家は静かな山あいの温泉に1ヵ月以上も逗留して作品を書くというのが通例であった。最近では小説・映画の舞台を巡る旅がブームで、町おこしの目的で記念館もつくられている。作家と温泉を語るとき筆頭は、やはり「金色夜叉」尾崎紅葉と熱海温泉だろう。しかし熱海は交通の便が良く、鄙びた温泉ではない。志賀直哉の「城崎温泉」などは静かな旅館が、すっかり変貌してしまった。夏目漱石「坊っちゃん」の道後温泉、川端康成「雪国」の越後湯沢温泉や徳富蘆花「不如帰」の伊香保温泉、国木田独歩「湯河原ゆき」の湯河原温泉などデラックスなホテルが立ち並ぶ。「湯河原の渓谷に向かった時は、さなから雲深く分け入る思いがあった」と独歩は記している。独歩のように実名を記してくる作家は地元にとって有難い。藤原審爾などは奥津温泉を「秋津温泉」とわざわざ架空名にしているのは、悔やまれる。
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コメント
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昔の文豪は静かな場所で書き物する人が目立ったみたいですが、今の時代は多忙なので、どんな場所でもパソコン開いて打ち込む作業が当たり前・・
これではじっくりした作品生まれないわけだ。
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2013年1月27日 (日) 04時47分