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2025年8月13日 (水)

秘密懇談会「三年会」

 昭和18年か19年ころ、時期はあまりはっきりしない。とにかく日本の敗戦が目に見えてきた頃だと思う。敗戦を視野に入れた、学識経験者が率直に話し合える少数同志の秘密懇談会のようなものが作れないものかと重光葵が発案で秘密懇談会「三年会」というのがあったそうな。重光の秘書官加瀬俊一は山本有三に打診した。山本は、トルストイ流の平和主義者で、戦争嫌い、大の軍人嫌いの志賀直哉が適任であると考え、メンバーを集めた。志賀は谷川徹三にはかって、秘密裏に組織された。メンバーは安倍能成、志賀直哉、武者小路実篤、田中耕太郎、富塚清、山本有三、和辻哲郎の9名である。この会は、結局何の成果もあげることはなかった。会の内容や記録などは一切残っていない。想像するに、戦後に刊行された雑誌「心」にその残滓があるのかもしれない。戦後の教科書に名を残す日本を代表する知識人たちもまだ原爆や沖縄戦、南京事件、シベリア抑留、ナチの強制収容所など悲惨な現実を知る由もなく、戦争に対する考えは甘かった。いわゆる大正リベラリストたちの戦争責任論にもつながる。実は戦後80年を経過するが、政治家や経済人たちの戦争犯罪は指摘されていたが、学者、文学者、芸術家への戦争責任論はあいまなままで終わっている。このことは文学史の見直しとも関連する。昭和40年代、文学全集ブームで講談社、筑摩書房、河出書房など多くが出版された。それが近年、出版されなくなった。多巻物の全集を買う人がいるだろうかという疑問はさておくとして、各巻の文学者の選定に悩むこともあるだろう。いわゆる純文学だけではなく、歴史文學、推理小説、中間小説など多岐にわたるであろうし、戦争文学やドキュメントなど新視点で人選するとこれまでとかなり違った人選になるだろう。戦後作家が明治・大正の老大家と並べられることに好ましく思わないこともあるだろう。文学や思想がいかに非力だつたかを痛感するばかりである。

 

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