日本を知ろう
日本とは何か。日本の文化を探求するためには、中国や朝鮮との古代文化交流が大切であるが、近代になると、とくに西洋との関連における日本人の思想の変化が大切であろう。西洋といっても、戦後はとくにアメリカの商業的資本主義が大きな影響を受けており、近年はとくに現代資本主義とIT革命を基本とした思潮が主流となっている。日本の伝統を見失った狭量な独善主義に陥らないためにも、歴史的、哲学的な省察を加えて、自然・人文・社会の各方面にわたり検討している必要がある。昭和45年ころに出版された増田四郎編「西洋と日本」という中公新書の一冊は現在に読んでも有益な示唆に富んだ良書である。島田謹二の「近代日本文学の一つの見方」を読むと、何かしら不図気づいたことがある。「最近百年間は、いつも新しい文学でなければだめだというおたけびが耳につく」と島田は述べている。漱石・鴎外・自然主義・荷風など西洋文芸の影響を受けたものである。日本研究という点から言うと、樋口一葉の「たけくらべ」や鏡花の物語が日本のいちばん深いもの、かわらないもの、と高く評価している。近年も、日本人は海外で評価された文学がベストセラーなるに傾向があり、必然的に無国籍風・翻訳的な文体が新しい文学とする傾向が見られる。
« 白水阿弥陀堂(「シ」事項索引) | トップページ | マキァヴェリ »
コメント