ブラック・ダリア殺人切断事件
戦争中の殺人事件の増加や、簡単に人を殺す風潮は、多くの人間が戦地で死んでいく状況で生命の価値が軽視されていたことと強く結びついている。戦争によって人間性を踏みにじられた軍人たちが、どのような精神状況で終戦直後を生き抜いたか知ることはなかなかできない。世界的にみても終戦直後の数年は犯罪は、暴力犯罪は55%、性犯罪はほぼ40%も増加した。日本においても金田一耕助シリーズの小説にみえる事件には猟奇的な犯罪が多く終戦直後という時代設定にしているという事も無関係といえない。
1947年1月15日、ロサンゼルスで起きたエリザベス・ショート(1924-1947)という若い女性の迷宮入りとなった悲惨な殺人事件がよく知られている。女優志望の被害者エリザベスは売春婦・ウェイトレスなどをして稼いでいたが、いつも黒い下着を身につけていたことから、ブラック・ダリアと呼ばれている。女性の死体はウエストの下で2つに切断されていた。片方の大腿には「BV」の文字が刃物で刻まれており、一方の乳房は半ば切り取られ、口の両端は頬まで深く切り裂かれていた。そして死体からは、明らかに血液が抜かれていた。このアメリカ犯罪史上、最も有名な猟奇殺人では40人あまりの嘘の自白があった。この事件では、男性だけではなく女性からも自首してきて、虚偽の自白をした。彼女たちの告白には、べスが自分の男を盗んだので殺したというものが多かったが、自分を捨ててほかの女のもとに走ったので殺したと言った女性もいた。結局、事件から70年近くが経つが真犯人は判らず、迷宮入りとなってしまった。2006年ブライアン・デ・パルマ監督によって、この事件を題材として映画化されている。(Black Dahlia,Elizabeth Short)
« 永遠の少年「シェーン」「子鹿物語」 | トップページ | 芥川賞と直木賞 »
「世界史」カテゴリの記事
- 同盟市戦争(2025.02.10)
- 英領インドにおける高等文官制度(2024.12.20)
- ムハンマドの死後(2024.10.06)
- 世界史探求(2024.05.21)
- ルイ3世(西フランク王)(2024.04.10)
ケペル先生のブログに、感心すること、しきりです。記事の材料を仕入れる作業は、大変でしょうが、結構楽しいものではないでしょうか。今日は、いったい何の記事か、と日々
期待を持って待ち受けています。お身体を
大切に、ますますご活躍ください。
仙台 栗原
投稿: 栗原 | 2014年1月15日 (水) 07時14分
広い世界に一人でも読んでくれる方がおられてとてもうれしく思います。記事のネタ探しは苦労しますが、百科事典を基本に、誰れでも知っていることに「あと一歩」詳しい事柄を調べています。
投稿: ケペル | 2014年1月15日 (水) 15時23分