泉鏡花忌
小説家・泉鏡花、1939年の忌日。鏡花は多作だった。生前の春陽堂版の全集で15巻、没後の岩波版で28巻別巻1巻ある。最近刊行された「新編泉鏡花集」全10巻は、東京、相州・伊豆、京阪、伊勢・名古屋、信州飛騨、北陸、東北と地域別で構成している。作品内容やテーマも多岐にわたる。鏡花世界という表現がよく使われるが、精神科医からは離人症状やノイローゼも指摘している。胃腸疾患や伝染病恐怖症でもあったが、67歳と当時の年齢でいえば天寿をまっとうしたといえる。
ある席で、佐藤春夫が鏡花と同席した。春夫が子供をもうけたことを話すと、鏡花は大いに祝福し、その名を問うた。春夫はそれを告げたが、鏡花が、どのような字を書くのかと、さらに問い返したので、側にあった座布団の上に、指で書いて示すと、鏡花はたちまち機嫌を損じて、人の尻にしくものに、文字を書くとは何事ぞと強くそれをとがめた。鏡花にとって、文字は神聖なものであったのである。
また恐怖症でカミナリが怖くて、蚊帳の用意が必要だった。生ものはあたるからと一切食べず、酒もぐらぐら煮立てて飲む。飯を喰うのは早くて、大きな茶碗で息もつかず、ザクザクと喰ってしまう。ことに蕎麦等は大概三口半で平らげる。(9月7日)
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