オリンピックと聖火リレー
7月26日に開幕するパリ五輪の聖火が、ギリシアから地中海を渡って8日、南仏マルセイユに到着した。聖火リレーは9日に始まり、開会式まで約1万人のランナーがトーチを運ぶ。オリンピックで聖火を灯したのはアムステルダム大会(1928年)が最初であるが、聖火リレーはベルリン大会(1936年)が最初である。聖火リレーのコースは、ギリシアのオリンピアを出発して、ブルガリア、ユーゴスラビア、ハンガリー、オーストリア、チェコスロバキアを経由してドイツ国内にやって来る。ドイツ政府は聖火リレーのルート調査のためにルート途上の各国の道路事情を綿密に調査していた。この調査報告書は1939年に始まった第二次大戦のドイツ軍侵攻にたいへん重要な資料となったことは言うまでもなかろう。それとヒトラーには「ドイツ民族は古代ギリシア人の直系子孫である」とアーリアン学説を信奉しており、ギリシアとドイツとを結びつけるのに聖火リレーは有効であった。ベルリンオリンピックは聖火リレーのほかにも、国旗掲揚・国歌演奏といったセレモニーをスポーツ競技に加えることによって、国威発揚をねらった。実験段階ではあるが初めてテレビ放送されたのもベルリンオリンピックである。その後のオリンピックはヒトラーの遺産をそのまま継承している。レニ・リーフェンシュタール(1902-2003)の公式記録映画「オリンピア」がある。開会式に集まった10万人のドイツ国民が右手を掲げ、開会宣言をするヒトラーに対し「ハイル、ヒトラー!」と叫ぶ。この映画は世界中で絶賛され、日本でも「民族の祭典」「美の祭典」として公開され話題となった。独裁者ヒトラーにとって、聖火は権力の象徴であり、オリンピックは権力を世界に誇示するための格好の舞台であった。
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