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2024年3月28日 (木)

戦時における敵性語の使用禁止

Photo_3  昭和15年ころから日本では戦時体制の強化とともに、「鬼畜米英」「米英撃滅」が旗印となり、一種の英語排斥が起こった。全国の4000の鉄道の駅やホームに掲げられた日英併記の案内板「入口 エントランス」「便所 WC」など英語が削除され、「カレーライス」を「辛味入汁掛飯(からみいりしるかけめし)」と言い換え、紙巻きタバコ「ゴールデンバット」が神武天皇神話に登場する金色の鵄にちなんだ「金鵄」へと改称されるなど、敵性語の使用禁止が進んだ。昭和15年3月28日、内務省が「時局柄奇をてらう芸名は改めるように」と、通達を出した。槍玉にあがったのは漫才のミス・ワカナ、歌手のディック・ミネ、俳優の藤原釜足ら16人。「外国人と紛らわしい」「不敬」「不まじめ」などが理由だった。ミス・ワカナは「メス・ワカナ」と一字変えただけですました。ディック・ミネは本名の三根耕一、藤原釜足は藤原鶏太に変えた。野球選手のスタルヒンは須田博に改名(昭和15年9月)。

   昭和18年1月13日には、「ダイナ」「私の青空」「月光価千金」「アラビアの唄」「スザンナ」「南京豆売」などジャズ、軽音楽の演奏が禁止された。米英音楽は軽佻浮薄でこれを一掃するとした。芸名や駅名のカタカナ語を追放する動きは既に昭和15年からあったが、日米開戦を機に敵性語は排除された。追放対象は、雑誌名、職業名、スポーツ用語など、日常的に親しまれてきた米英語にも向けられた。2月には、エコノミスト→経済毎日、サンデー毎日→週刊毎日、キング→富士、大阪パック→漫画日本、エンジニアリング→機械技術、ホームクラブ→生活文化。レコード会社はポリドール→大東亜、日本ビクター→日本音響、日本コロムビア→日蓄工業、キング→富士音盤。煙草はゴールデンバット→金鵄、チェリー→桜、カメリア→椿。ミス・コロムビア→松原操。

    スポーツ用語では、水泳のクロールは「速泳」、ゴルフは「打球」。とくに野球は敵性スポーツとの批判が高かった。チーム名はタイガース→阪神、イーグルス→黒鷲→大和、セネタタース→大洋→西鉄。3月2日には、野球用語が、全面英語禁止となり、ストライク→よし1本、ボール→1つ、三振→それまで、セーフ→よし、アウト→ひけ、ファウル→だめ、ボーク→反則、タイム→停止に変わった。

   清沢洌はこれらを「小児病的な現代思想」と嘆いたが、この時期アメリカでは対照的に日本語習得が盛んになっていた。

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