フルネームで覚える外国人名
幕末に艦隊を率いて鎖国の日本に来航し、開国に成功した米国のペリーの名前は日本人なら知らない人はいない。しかしフルネームで言えるだろうか。マシュー・カルブレイス・ペリーというが、フルネームで覚えている人は意外と少ない。「ヘボン」と聞けば、誰しも「ローマ字」を思いうかべるであろう。正しくは「ヘプバーン」と表記すべきだが、当時の日本人にはヘボンと聞えたらしく、一般に今でもヘボンで通用している。しかし「ジェームス・カーチス・ヘボン」とフルネームを言える人は少ない。幕末に西洋医学を伝えたシーボルトもしかり。フィリップ・フランツ・バルタザール・フォン・シーボルトである。WHOの事務局長テドロスもフルネームでは覚えにくい名前である。正式にはテドロス・アダムノ・ゲブレイェソス。
これは学校教育と関係していて、外国人名は試験などではフルネームまで覚えることを求めていない。おそらく暗記事項の負担を考えて、フルネームの暗記は必要なし、というのが明治以来の伝統である。しかしこれは初学者であればよいが、歴史を専門に学ぶ者にとっては大きなツケがまわってくる。19世紀オペラの作曲家リヒャルト・ワーグナー、ジュゼッペ・ヴェルディはフルで言えるが、ロッシーニのフルネームが言えるだろうか(ジョアキーノ・ロッシーニ)。チェンバレンなどジョゼフ、オースティン、ネヴィルなど注意深く区別する必要が生じてくる。将来歴史家になりたいなら、やはり若いうちからフルネームで覚えておく習慣をつけておくのがよい。
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