ハイカラ(明治事物起源)
明治初期、文明開化の時代になって、これまでにないほど多くの外来語が慣用による日本語化した発音に従って生まれた。ハンカチ、シャツ、カフス、リボン、ピアノ、カナリア、ダイアモンド、サイダー、コーヒー、コロッケ、ポケット、ガラス、キャベツ、ノート、インク、ランプ、ベッド、バケツなどなど。明治初期外来語の中には、現在も使われている言葉もあれば、死んだ言葉もある。「ハイカラ」はハイカラー、つまり、丈の高い襟という意味だが、転じて、西洋風を気取るという意味で明治期広く使われた流行語だが、現在では死語といってもよい。
「ザンギリ頭を叩いてみれば文明開化の音がする」と歌われた明治初期、断髪令が明治4年に発令され、それに合わせて洋服も急速に普及していった。ハイカラと洋服とは深い関係がある。明治31年ころ、東京毎日新聞の記者であった石川安次郎(号は半山、1872-1925)が「ハイカラ」という語を、「当世人物批評」紙上にかかげて新帰朝者を冷評したことに始まる。ハイカラはたけの高いカラ(高襟のシャツ:high collar)のことで、洋行がえりの紳士が欧米で流行の高い洋襟やネクタイをつけて得意となり、その風がきわめてキザにうつって仕方がなかったので、それを皮肉ったのである。それがいつしか一般にも広まり、灰殻(はいから)という言葉の音が、いかにも吹けば飛ぶような感じをあたえるので、キザで生意気または洒落者などの軽佻浮薄の徒という意味にもちいられたのである。それに対して外交官の小松緑が文明的、進歩的な意味だと弁護したことから、最初は舶来かぶれのキザ男が、やがて洒落者や最新流行ものの肯定的な意味でも使われるようになっていった。「蛮カラ」は「ハイカラ」をもじってできたできた言葉である。
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