予の辞書に不可能という言葉はない
世界史の英雄ナポレオン。後世の歴史家は彼を「時代に遅れていると同時に、時代に先駆けてもいた」と評する。革命後のフランスに登場したナポレオンは、イタリアに遠征して連戦連勝であった。1799年11月のクーデターで権力の座についてからは、ヨーロッパ大陸の大半を手中におさめ、全ヨーロッパの支配者として権力の絶頂にたった。「余の辞書に不可能という言葉はない」この言葉は、1800年、再度オーストリア軍を攻撃するために、愛馬マレンゴに乗ったナポレオンが吹雪のアルプスを越えるときに放った名言として知られている。将兵は「この険しいサン・ベルナール峠は、とうてい大軍がとおることはできそうにありません」しかし、ナポレオンは大きな声でいった。「わたしの辞書には、不可能という言葉はないのだ。人間の力で、この峠が越せないはずはない」フランス軍は、進撃をつづけた。この強い自信と、決断力から「予の辞書に不可能という言葉はない」という名文句が生まれた。
このエピソードは、海外の書物にも記されているのか、それとも日本の子ども向けの伝記だけなのか。だがなんとなく源義経の鵯越の逆落としを思いおこさせる。実際にナポレオンが「余の辞書に不可能という言葉はない」に近い言葉を残したのは、10年以上のちのことである。ワーテルローで敗戦して、連敗続きでチェルリ宮に籠っていた1813年初夏のころ。前線にいるドイツのマグデブルクの司令官ルマロワが「この街を守るのは不可能な気がいたします」と弱気の報告書をナポレオンに寄こした。これに対してナポレオンは7月9日付で「不可能ですと。あなたはそうお書きになりましたが、不可能という言葉はフランス語にはありせん」と書いて送った。ここからナポレオンの名言「余の辞書に不可能という言葉はない」が生れたと思われる。
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投稿: Ferminfum | 2017年7月 9日 (日) 10時09分