堀辰雄と眼鏡
1953年のこの日、堀辰雄の忌日。馬酔木は早春に白い色のつぼ形の花を咲かせる。アセビの咲く頃になると堀辰雄(1904-1953)を思い出す。「浄瑠璃寺の春」という一文に馬酔木が出てくる。高校の国語の教科書に抜粋されていたのを読んだに過ぎないが、万葉集で詠まれた馬酔木の花をみたくて夫婦で旅をするというのが、想像しても絵になる世界であった。それも戦時下である。堀が病弱であることは知っていたが、あらためて年譜で確認すると、やはり悲惨な人生そのものである。関東大震災で母を亡くし、その前後から胸を病んでいたが、戦時中にやはり悪化させ、昭和21年10月から、死ぬ28年までの7年間は病床に伏していた。妻多恵さんも介護が大変だったろう。享年48歳。堀文学には知性と気品があり、芸術的な人生だったような気がする。彼の作品はいつまでも色あせることがない。本人の希望により戒名はなく、墓碑にも「堀辰雄之墓」とだけ記されている。
堀辰雄のトレードマークは丸メガネである。戦前は、眼鏡の作家がとくに多い。井伏鱒二、中野重治、山本周五郎、伊藤整など。戦後作家では大江健三郎が丸メガネを愛用している。(5月28日)
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