20世紀初頭のイギリス思想と宗教界
今日からみれば、19世紀から20世紀へと移り変わってゆくときは、時代の終焉をきざむ平穏な時期のようにみえる。しかし、一見穏やかにみえたヨーロッパ文明の背後には、実は多くの緊張がかくされていたのである。植民地の獲得によって、ヨーロッパの前に世界市場への門戸が開かれたが、そのため国家間の競争ははげしさを加え、敵対意識が生まれ、強力な同盟が諸国の間に結ばれるきっかけとなった。これら一触即発の状況が、のちに悲惨な大爆発を引き起こすことになるのである。ヴィクトリア女王が崩御した後に王位に就いたのはエドワード7世。エドワード7世の治世は1901年~1910年と10年だった。ヴィクトリア女王の治世をヴィクトリア朝と呼ぶのに対してエドワード朝と呼ばれている。次がジョージ5世。1910年~1936年。名探偵ポアロの時代はジョージ5世の頃である。ここで取り上げるイギリス人、とくにロンドンっ子といえば思想的には保守的でジェントルマンという固定したイメージがある。そして宗教は英国国教会でカトリックは少ないと考えるだろう。イギリスのバイブルを定めたルターの影響がいろいろあったが、教会は本質的にはカトリック的であった。19世紀の初め、産業革命の結果として商業主義がはびこると、1833年から1841年にオックスフォード大学に宗教運動が起こり、英国国教会をローマへ近づけようとした。イギリスの社会主義はトーマス・ヒル・グリーン(1836-1882)が先駆で、第一次世界大戦からバートランド・ラッセルが社会主義を主張し、思想界ではラスキやコールら知識人がマルクス主義に傾倒していく。宗教ではギルバート・ケイス・チェスタートン(1874-1936)やイーヴリン・ウォー(1903-1966)、グレアム・グリーン(1904-1991)ら作家も1920年代、カトリックへの改宗がみられる。またラッセルなどの無神論もみられる。個人の信仰や思想の自由が相当保障されていたのであろうか。
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