ガッツポーズ論争
ロジェ・カイヨワ(19913-1978)によると、「遊び」はアゴン(競争)、アレア(運、偶然)、ミミクリ(模倣)、イリンクス(めまい)の4種類に分類されるという。
アゴンとは競争の形をとる遊びで、徒競走、競泳などが含まれる。アレアとは偶然にゆだねる遊びで、じゃんけん、サイコロ、賭博などが含まれる。ミミクリとは別の人格をよそおう遊びで、ごっこ遊びや演劇などが含まれる。イリンクスとは意識の混乱を求める遊びで、ブランコ、メリーゴーランド、ジェットコースターなどの疾走感をともなうものなどが含まれる。
スポーツとは、本来、遊びが発展し、一定の共通した規則に従って身体的諸能力を競い合う、アゴンのカテゴリーの一つである。現代におけるスポーツという活動の解釈は多様であり、広義にとらえると、健康・体力の維持向上を目指した身体活動やレクリェーションなどの身体活動としてとらえられるが、狭義にとらえると、スポーツとはアゴン(競争)の原理によって構成されるプレイであり、身体技量の競争としてとらえられる。
このことから、スポーツの原動力は「アゴンの欲求」であるといわれる。アゴンは自己の優越性、つまり自分がすぐれていることを他人に認めさせ、客観的な承認を得ようとする欲求であり、通常、オリンピックなどのように高度なスポーツ技術を大勢の観衆が見物するスタジアムで競い合うイベント形式で行われる。自己の優越性を誇示することが動物本来の欲求であり、今日の選手の「ガッツポーズ」や「雄叫び」などはその自己表現であろう。またすぐれたものを選び出し、栄誉を与えるのも社会的な機能のひとつである。例えばマラソンはオリンピックの華といわれるが、優勝者には月桂冠が授けられる。月桂冠とは、古代ギリシアで月桂樹をアポロ神の霊木とし、その枝葉を輪にして冠とし、優勝者の栄誉をたたえるために授けるのである。
リオ五輪もアゴンの欲求、つまりガッツポーズが目立つ。太田選手のフェンシングでも2人の競技者がほぼ同時にガッツポーズをして自分の優位性を誇示する。卓球やテニスも得点が入る度にガッツポーズがでる競技の1つである。評論家の張本勲が銅メダルを獲得した卓球選手に対して、「あんなガッツポーズはダメ。手は肩より上げてはいけない」と指摘した。しかし、王貞治が756号ホームランを打った瞬間の写真では、張本は大きくジャンプしながら右手をあげてガッポーズしている。
ガッツポーズ以外にも最近は、アゲアゲとかさまざまなパフォーマンスが流行している。侍ジャパンのヌートバー選手が胡椒を挽くようなポーズをするペッパーミルが大流行だ。センバツ1回戦でも東北の選手がこれを真似したところ、審判は「相手にに失礼な行為」「煽り行為」と認定して注意した。ガッツポーズと何が違うとの声もあるが、高校野球は教育の場であることを考えればやむをえない判断であろう。
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