俊寛と有王丸伝説
三重県桑名市矢田に「有王塚」という句碑がある。正面には「塚になけ わが泣くあとを 友千鳥 句仏」とある。平家物語に登場する俊寛に関連する伝説がある。俊寛には幼いときから可愛がっていた有王丸という少年がいた。有王丸は人目を避けて隠れ住んでいる俊寛の娘をたずねて流罪中の俊寛の様子を見てくるという。有王丸はただひとりで鬼界ヶ島へ向かって旅立った。少年にとってはつらい旅だが主人をしたう心だけが有王丸を支えていた。行く先々で人に怪しまれ衣服を奪い取られるなど苦難の旅を続けた有王丸はようやく鬼界ヶ島にたどりついた。そして俊寛と再会し、12歳になる姫の手紙を渡した。そして俊寛は有王丸と会ってから23日目に37歳でその生涯を終えた。有王丸は俊寛の遺骨を抱いて持ち帰り、高野山奥院に納めたと伝えられる。一説では、有王丸は行脚の途中、病気となり、りん崇寺門前で生き倒れて死んだという。この桑名の地に塚がつくられたらしい。有王丸が実在したかは定かではない。平家物語には有王丸という侍童は述べられておらず、潤色されて有王丸が登場するのは後代の俗書のみである。しかし、少年が長旅の末に、疲れて行き倒れて死ぬという話は痛ましく涙をさそうものである。芥川龍之介「俊寛」には有王丸が登場する。
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