旅途
旅途
旅いづることにより
ひとみあかるくひらかれ
手に青き洋紙は提げられたり
ふるさとにあれど
安きを得ず
ながるるごとく旅に出づ
妻は雪のなかより萌え出で
そのみどりは磨けるごとし
窓よりうれしげにさしのべし
わが魚のごとき手に雪はしたしや
室生犀星「抒情小曲集」小景異情に続く詩である。タイトルの「旅途」は「りょと」と読む。意味は「旅のみち。旅路。旅行」。漢字はもともと中国からの借用したものがほとんどである。「旅行」も「旅途」もむかしは日本でも使っていたが「旅行」のほうが皆使うようになった。英語のJourneyのような感じか。travelやtripなどと区別があるように、中国語にも「旅行」と「旅途」の違いがある。ちなみに中国で「寶可夢旅途」は「ポケット・モンスター」のこと。
漢語というと、すべて中国で工夫されたもので、日本人はそれを借用しているのだと考えがちであるが、日本人が工夫した漢語も、実はなかなか多い。特に明治以降、西欧文化を受け入れるのとあいまって工夫された日本製漢語のなかには、その後中国に輸出されて、今日では中国語として用いられているものも少なくない。
例 文化 文明 政治 社会 法律 文学 電話 集団 共同 哲学 心理 科学 物理 帰納 演繹 図書館 野球 銀行(諸説あり)
このように明治以降、数限りない日本人が、新しい文化にともなう漢語を作ってきた。しかし「旅途」のように中国で使用されている漢語を日本で使おうとこころみた例もあるが、その後日本では定着しなかった場合もあった。
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おはようございます。
旅行は素敵ですね。行くのが大好きです。頑張って下さい。今日のお昼は、「さくら」の再放送の第46回を見ます。
投稿: ミリオン | 2023年11月27日 (月) 11時09分