案山子(かがし)の話
農作物の鳥獣害を避ける手段は、およそ3種に分類できる。
1.農神や田の神を迎えて豊穣を祈るとともに、害を避けようとする方法で、神の依代の人形や神札を田畑に立てたり、注連を張り廻す。これを中部東海地方ではソメといい、静岡地方では山人(やまびと)、北陸近畿以西では脅(おどし)といっている。
2.悪臭のする物を畦畔に置いて、鳥獣を畏怖または嫌悪させる方法で、襤褸(ぼろ)・毛髪・魚の頭・獣肉などを焼いて串に挟んだり注連に下げたりする。これを一般に嗅(かが)しという。
3.物音を立てたり、鳥獣の死屍を吊し下げて畏怖させる方法で、人が大声で追うたり、水車・板木・空缶・空砲を利用したり、死屍を吊るしたり、その方法は近年の発案が極めて多く変化に富んでいる。山の添水(そうず)・ボットリというのは、水力による搗杵の音の利用名であり、夜追・猪追・鳥脅そのほか新案の名称も多い。現在ではこれらのものを総称して案山子(かがし)という。 かかしを「案山子」という字をあてる理由は判然としない。元々中国の僧侶が用いた言葉で、「案山」は山の中でも平らなところを意味し、「子」は人や人形のことだそうだ。かかしは、「鹿驚(かがせ)」の意から出たともいわれるが、一般には悪臭を発して鳥獣を追う「嗅(かがし)」が語源とされる。
参考までに世界の「かかし」の単語を列挙する。
scarecrow スケアクロウ 英語
epouvantail エプヴァンタイユ 仏語
Vogelscheuche フォーゲルショイヒェ 独語
spaventapasseri スパヴェンタパッセリ 伊語
espantapajaros エスパンタパッハロス 西語
スキャフトロ ギリシャ語
ブーガラ ロシア語
フォルミード formido ラテン語
ダオツァオレン 稲草人 中国語
ホスアビ 韓国語
鳥取県八頭町では案山子を使った町おこしに取り組んでいる。2013年には世界13ヵ国の案山子を集めた「世界かかしサミット」が開催された。韓国やロシア、モロッコなどさまざまな国の案山子が展示された。 (参考:『民俗学辞典』東京堂 1951年)
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