なぜモームはノーベル文学賞を受賞できなかったのか?
サマセット・モームの代表作といえば「人間の絆」(1915)である。最初「灰より生まれでし美」と名づけたが、他人が使っていたので「人間の絆」と改めた。最初は不評で本が読まれだしたのは「月と六ペンス」が出版された後の1919年以降である。以後、モームの「雨」や 「剃刀の刃」は映画化され大衆作家として認められ1930年代から1940年代にかけて最も世界でポピュラーな作家であった。91歳という長寿で長い文学活動をしながら何故かノーベル賞には無縁だった。この理由をある人に尋ねたら、「いわばモームは直木賞なんだよね」という。ノーベル賞の文学作品ばかりを集めた文学全集がむかし出版されたがほとんど誰にも読まれなかった。ノーベル賞受賞作品を並べても世界文学史にはならない。ゾラ、イプセンやトルストイ、チェーホフといったロシアの両文豪がいない。「トム・ソーヤの冒険」「ハックルベリー・フィン」のマーク・トゥエーン、「失われた時を求めて」のマルセル・プルースト、「チャタレイ夫人の恋人」のハーバート・ローレンス、「ユリシーズ」のジェームス・ジョイス、「凱旋門」のレマルク、詩集「ブエノスアイレスの熱狂」のボルヘスなどノーベル賞を受賞しなかった世界的文学者は数多くいる。
« ワン・ツー・スリーの日 | トップページ | カリフォルニア・ゴールドラッシュ »
「世界文学」カテゴリの記事
- 繃帯を巻いたアポリネール(2023.04.09)
- アレオパジティカ(2023.06.01)
- ワシリ―・アクショーノフ(2023.02.05)
- 青ひげ物語(2023.02.04)
- マーティン・マルプレレット論争(2018.11.02)
コメント