良い人に思われたい心理
人気ドラマ「silent」では手話がよく登場して、このドラマを観て手話を始めたという若い人が増えた。8話での奈々と春尾の過去のシーン。春夫がボランティアで手話を学ぶ学生たちに奈々を紹介する。だが奈々は怒って帰ってしまう。春尾はわけを糾すと、「遊び道具にされたみたいで不快だわ。あの人たち手話に興味があるわけじゃない。良い人って思われたいだけ。善意は押しつけられたら偽善なの」と怒る。
世の中、自分が良い人と思われたいのは誰にもあるだろう。好感度を高めるためには、見た目もお洒落にして、弁舌もさわやかに、裾裁きも颯爽とする。とくに政治家というのは投票で選ばれるので、イメージとか印象が大切である。岸田文雄首相は見た目もよく、弁舌さわやかにして「聞く力」もあるが、優柔不断で支持率は減少傾向にある。首相動向のニュースによると、3日午後、東京の日本橋室町の書店を訪れ、20分ほどかけて5冊の書籍を購入したという。読書家でもあり、知性的な人なのだ。本はもちろん写真集やエロ本ではない。村上春樹の「女のいない男たち」という映画「ドライブ・マイ・カー」が収録されている短編集。村上とは同じ早稲田大学出。でも総理にお勧めした本ならもっと他にあると思う人もいるだろう。お洒落でトレンディーなのも結構だが、そこには「良い人に思われたい」という心理が働いているような気がする。総理とはむしろ嫌われてもいいから、信念をもって実行力を示すリーダーの決断が問われる。側近の浅知恵なのかもしれないが、難問山積の時節、軽薄なイメージ戦略は不要である。
コメント