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2022年12月20日 (火)

史上最大の海難事故ドニャ・パス号の沈没

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  史上最大の海難事故は、あのタイタニック号ではなくてドニャ・パス号である。1987年12月20日、フィリピンタブラス海峡で客船ドニャ・パス号が沈没した。死者は公称では1575名(定員1518名)だが、実際は4375名の死者を出していた。これは史上最大の海難事故である。ちなみにタイタニック号の犠牲者は1513名といわれる。

    ドニャ・パス号はもともと1963年、尾道造船で建造された琉球海運の「ひめゆり丸」(定員608名)で、元の面影がなくなるほどの改造で1493人の定員に増加されていた。ところが当日はクリスマスを5日後にひかえた帰省客で切符のない人が多数乗っていた。乳幼児や兵士たちもおり、4000人以上が乗っていたと推測される。乗客の証言によると、満杯の乗客で船は初めから傾いていたという。しかし、悪天候の中、定員オーバーで、レイテ島のタクロバンからマニラへ向けて出航した。フィリピン国内航路では、乗客名簿が徹底されていないことが、後で大きな問題となった。

    事故は夜中の10時に起こった。ミンドロ島附近のタブラス海峡で小型タンカー「ビクトル号」と衝突した。ビクトル号には8000バレル以上の石油や灯油を積んでおり、大爆発を起こし、火災となった。パニックになった乗客は海に飛び込んだが、多くの人は燃える海で焼け焦げて死んだ。生存者はわずかに乗客24人、乗組員2人だった。ミンドロ島にはたくさんの焼死体が流れ着いた。

    衝突の原因は過載積による機動性に欠けるドニャ・パス号の操縦ミスと考えられるが、海事調査委員会の結論は、スルピシオ社に責任はなく、ビクトル号側にあるものとした。ビクトル号には適切なライセンスをもった航海士や見張りもなかった。またなぜ2隻の船は無線で交信しなかつたのか、事故当時、生存者の証言からドニャ・パス号の船上では乗組員らがパーティーをしていたという話もあるが、結局は事実の解明はなされなかった。こうして史上最大の海難事故ドニャ・パス号沈没事故は謎のまま20年以上が過ぎて人々の記憶から忘れさられようとしている。

     1980年代はソ連軍による大韓航空機サハリン沖撃墜事故・死者269人(1983.9)、日航ジャンボ機墜落事故・死者520人(1985.8)、大韓航空機爆破事件・死者115人(1987.11)など飛行機事故・事件も相次いだ。だが史上最悪の惨事であるドニャ・パス号沈没事故が吉川弘文館「世界史年表」など多くの記録にないことは一つの謎である。日本の中古貨物船の払い下げが悲惨な事故の背景であることの事実を隠蔽しようとする日本人の体質なのだろうか。Dona Paz

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コメント

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「日本の中古貨物船の払い下げが悲惨な事故の背景であることの事実を隠蔽しようとする日本人の体質なのだろうか。」

とまとめておられますが、ドニャ・パス号は売却後「フィリピンで火災事故により全損廃棄」とされた後、フィリピンで独自に修復し、なおかつ「定員を日本船時の3倍にする改造」を施しています。

廃船をサルベージするだけでも安全上の問題があるのに加え、船舶としての機動性や復元性を著しく損ねるであろう改造を施した船舶が、規制を受けずに航行していたという事実は、フィリピンの船会社およびフィリピンの海事当局がその責めを負うべき事項であり、日本が転売したこととは無関係かと思われます。

転売後の中古船について、旧船籍者が終末責任を負うべきとのお考え自体にもいろいろ思うところはあります。しかし、転売後の「むちゃくちゃな運用実態」について「事実を隠蔽しようとする」のでないなら、その点についても記載するのが公平な姿勢かと思われますが、いかがでしょう?

コメントありがとうございます。結局、ドニャ・パス号事件で運航会社であるスルピシオ社は責任を問われることはなかった。だが2008年7月にフィリピン・シブヤン島で大型フェリーが沈没しおよそ800人が死亡した。この事故の背景にはスルピシオ社の杜撰な管理体制があるとされる。繰り返される海難事故を防止するためには日本も含めた関係国が協議して安全な運航をめざすルールづくりが必要と考えます。海事問題は疎いので多少の筆のすべりがあったことをお詫びします。

真摯かつ丁寧な返答を頂戴し、大変恐縮しております。
おっしゃるとおり、ドニャ・パス号事件でも運行会社のサルピシオ・ ライン(Sulpicio Lines)は事故を繰り返しながらも(ご指摘のように、ドニャ・パス号事件以降だけでも3件の重大事故がありますね)、十分に断罪されていませんし、対策を講じているとも言いにくいわけですから、何らかの国際的なルールが必要なのかもしれません。
ただ、内航海運については国家主権に直結する問題ですから、内政干渉にならないように配慮しつつ、緩やかなルール作りということになるようにも思います。

過積載事故ですね・・。(≧∇≦)
国によって違うでしょうが、国際的な基準を設定できないのでしょうかね。数千の島からなぬフイリピンですから、内航船の運行も盛んなのでしょうが、過積載は許されてはいけないですね。外国人観光客もいるでしょうから、厳しくチェックすべきでしょう。

ケペル氏の考方では、セウォル号沈没事故でも
日本人は責任を感じろとのお考えでしょうか?
中古であろうが新品であろうが、
販売時に瑕疵が無く後の改造にも無関係であれば、日本が責任を感じる必要は無いでしょう、
そして、日本に責任の無い事故を、民間の出版した年表に記載が無い事を、日本人の隠蔽体質だなどとの、捏造と悪意に満ちた表現、
極めて悪質な反日フロパガンダではないですか、削除し謝罪すべきだと考えますが如何ですか

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