初心忘るべからず
一年の始めの月を象徴するにふさわしい色は、何といっても白だろう。真っ白な雪、お供えやお雑煮の餅、社に詣でると魔除けのための白い色。「清浄」、「真っ白な心」、「純粋な心」、「素朴」、「初心」どれもいい言葉だ。そして「初心忘るべからず」という言葉を連想する。
広辞苑をみると「学び始めた当時の気持ちを忘れてはならない。常に志した時の意気込みと謙虚さをもって事に当たらねばならないの意」とある。つまり、ある程度、技量がついて自信をもち始めた時期が「慢心」という陥穽にはまる時期であり、この時期こそ「初心を」といさめているのである。
出典は、世阿弥の「当流に、万能一徳の一句あり。初心忘るべからず」(『花鏡』)である。世阿弥(1363-1443)は観阿弥の子で足利義満に認められて、以後その支援をえて、二条良基ら当代一流の文化人との交流をつうじて芸道・学問に精進し、名声をたかめ、乞食の所行とさげすまれてきた猿楽を室町時代を代表する芸能にまで押し上げることに貢献した。生まれたままの心で、初心を忘れず、自然に感謝し、小さい一草一花の美しさに新鮮な喜びを感じたいものである。(1月1日)
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