シニャックとヨット
今朝放送されたNHK「あさイチ」で国立西洋美術館に所蔵されているシニャックの絵画「サン・トロぺの港」(1902年)が紹介されていた。 ポール・シニャック(1863-1935)という新印象主義の画家は一生、海を愛し、ヨットを愛した。1884年、第1回アンデパンダン展でジョルジュ・ピエール・スーラ(1859-1891)と知り合う。4歳年長のスーラとの出会いはシニャックの芸術に決定的な影響を与えた。しかし、1891年3月29日、スーラの突然の死に深い打撃を受ける。何ヶ月間もまったく意気消沈した日々を過ごした。そこから彼を救ったのは地中海とその光であった。地中海に面したル・ラヴァンドゥの近くに住み始めたアンリ・クロスから「陽の光と豊かな線を愛するあなたはきっとここが気に入るだろう」という手紙をもらい、シニャックは、1892年4月、ヨットで大西洋からミディ運河を抜けて地中海に出、当時海からしか容易に近づけなかった、サン・トロペを発見する。当時はまだ鄙びた漁村であったサン・トロペに住み、以後20年にわたってここを基地としてマルセイユ、ヴェニス、コンスタンチノープルなどヨットで出かけて、地中海の港町を多数描いた。
シニャックの偉大さは、スーラの科学的絵画理論を広めただけではない。スーラの死後、新印象主義の後継者となり、アンデパンダン協会の中心的存在として活躍する。20世紀初頭に現れたマテイス、マルケ、ピュイ、マンギャン、オトン・フリエス、ラウル・デュフィ、カモワン、ケース・ヴァン・ドンゲン、ルイ・ヴァルタ、ドラン、ヴラマンク、ジョルジュ・ブラックらの作品がほとんどこのサロンに出品された。フォーブ(野獣)の画家たちのほとんどは、シニャックを通じて新印象主義の影響を程度の差こそあれ受けているのである。
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