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2022年7月19日 (火)

歴史総合はややこしい

 2022年は世界史、日本史に重要な事件が発生した。ロシアによるウクライナ侵攻と安倍晋三元首相暗殺である。この2つは無関係な事件であるが、今年からスタートした「歴史総合」では取り扱う範囲である(もちろん5年後、10年後の教科書の話であるが)。世界史、日本史なら整理しやすく理解しやすい事項も、「歴史総合」だと因果関係のない事項を整理して記憶するのは学習者にとってより複雑にすることだろう。グローバルな視野の中で現代世界とその中における日本の過去を現在、そして未来を主体的・総合的に考えることを可能にする新科目「歴史総合」が高校の歴史新科目に導入された。日本史Aと世界史Aを融合した科目で、近現代史を中心とし、必修科目となる。歴史教育はつねに為政者の都合よいように変更される。ねらい資本主義を正当化するためにある。極右政治家は始まりを明治維新からにしたかったらしいが、結局18世紀後半の産業革命からになった。帝国主義時代の国際関係はどのように働いて第一次世界大戦が勃発したのであろうか。20世紀初頭をみると、孤立化を恐れるイギリスは日英同盟を結ぶが、日露戦争の勃発はドイツの強引な外交政策とあいまって同盟関係に大きな影響を与えた。すなわち、多年の対立をやめて1904年に英仏協商が成立するとともに、ロシアの南下政策が挫折して英露協商が成立、ここに三国協商が成立し、ドイツ包囲体制ができあがった。またイタリアは仏伊協商を締結して三国同盟からしだいに離反した。日本は1907年に日露・日仏協商を成立させ、ドイツ・オーストリアは中欧に孤立した。第一次世界大戦の分野はほぼこのとき定まっていたといえる。

 話は変わるが、昨年のNHKの大河ドラマの主人公は「青天を衝け」で澁澤栄一であった。これは2024年から1万円紙幣の肖像に描かれることが大きなポイントになっているだろう。個人的に考えても、渋沢の生涯を概観することは意味のあることだと思う。歴史を研究するものにとって、常に我々が生きている現在の起点がどこか気になる。それは古代史を学ぶものや考古学でも同じだが、現代と関わりが大事である。もちろん直近の出来事のほうが密度は濃いが100年前、150年前のことも影響するが根深いものがある。近現代史でいえば第二次世界大戦後の米ソの冷戦体制が現代史の大枠を構成しているが、18世紀後半から始まったイギリスの産業革命と絶対王政を倒したフランス革命の歴史的意義が大きい。現代史でみると、蒸気機関、鉄道、電気、電話、自動車など技術の革新がめばえた19世紀半ばが注目される。すなわち渋沢の生きた激動の時代、天保11年から昭和6年までを辿ることは、世の中が大企業と金融資本家が育成されて巨大な資本主義国家をつくり、アジア・アフリカを植民地下において戦争をくりかえす帝国主義の時代にほかならない。ただしあくまで虚構の世界なので脚本家や演出家がどのような歴史解釈で描くかによってドラマは良くも悪くも変わるだろう。歴史総合はスタートしたばかりで書店にもまだ詳細な参考書はない。とりあえず帝国書院の「明解歴史総合図説シンフォニア」をゲットする。内容は第1部「近代化と私たち」、第2部「国際秩序の変化と大衆化と私たち」、第3部「グローバル化と私たち」。歴史総合のはじまりは、18世紀後半からイギリスで起こった産業革命である。蒸気機関と木綿加工機械との発明とともにはじまり、第一次産業革命と呼ばれる。それは長期にわたる経済上・技術上の一大変革であり、これによって従来の生産様式は根本的に改められ、近代資本主義経済が成立した。この革命は19世紀には欧米など他の諸国にも波及し、第二次産業革命と呼ばれる。1920年代にはフォードの大量生産方式による、メカニカル・オーメーション(MA)が起こり、第三次産業革命が生まれた。そして1980年代から21世紀の現代はIT革命を中心とした第四次産業革命と呼ばれるものが起きている。つまり産業革命は、二十一世紀の現在まで続いている状況をさす言葉である。同じように帝国主義というも言葉も、もともとは「領土の拡張」という意味でしかなかったが、現在の習慣としては、先進国による拡張政策をいうように、資本主義体制と帝国主義とは表裏一体をなしている。

 

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