国語辞典と百科事典を兼ね備えた辞書として「広辞苑」の初版がでたのは昭和30年5月25日。そして昭和44年に第2版、昭和58年に第3版、平成3年に第4版、平成10年に第5版、平成20年に第6版が刊行された。総収録項目数は新収項目1万語を加えて、約24万語。ライバルの『大辞林』(三省堂)を抜く。
「広辞苑」は旧版の項目を削除しないことを原則としている。「広辞苑」はもともと「辞苑」(博文館、昭和10年)の版権を譲りうけたものであるから、「辞苑」の語釈を引き継いでいる。「広辞苑」は当初「新辞苑」という書名で出る予定だったが、直前に「広辞苑」という書名になった。「広辞林」(三省堂)とあまりに似ているというので三省堂が岩波書店を訴えた。しかし裁判所からは和解が勧告された。事実上、三省堂の敗北だった。
岩波書店の「広辞苑」の原型である「辞苑」(博文館)には、「広辞林」によく似た記述が多い。たとえば「米なしデー」などという語は「広辞苑」には無いが、「辞苑」には次のようにある。
米食を廃して他の食料を代へ用ひ、米殻の消費節約をする一定の日。
「広辞林」の「米食を廃して他の食料を代へ用ひ、米殻の消費を節約せんとする一定の日」とあるのとほとんど同じ。つまり日本の国語辞典の原型は明治40年に刊行された「辞林」なのである。
広辞苑6版にない言葉として、「ゲリラ豪雨」がある。6版は平成20年1月に改訂され発売されたが、その年の夏に荒天が多発し「ゲリラ豪雨」がマスコミに多用されたので間に合わなかった。その他、広辞苑にない言葉。アーバンゴルフ、味写、アバター、アルティメット、イナバウアー、ウェルテル効果、英熟語、エンガチョ、お母さん助けて詐欺、オブローク、オレオレ詐欺、霞的、ガラケー、カルビナ、カローリング、キハーダ、キャレル、球電、久恋、逆玉、行徳のまな板、ググる、くまモン、グラウンドホッグ・デー、グレムリン、腰パン、コモン・マン、細光峰、婚活、シルム、スカイツリー、捨欠伸、スティーブンス・ジョンソン症候群、スンプ法、送寒衣、草食系、卒婚、ダハワラ、チャコペン、注染、中二病、チンコ坊主、手足口病、ツイッター、ツンデレ、テルマーバ半島、統一球、飛び出し坊や、ナスカ地上絵、成田離婚、ネクラ、ねずみ鋳鉄、のっこみ、ノマドワーキング、箱ひげ図、ハットトリック、パラノーマル、パラパラ、ハリーポッター、バルシチナ、氷筍、腹上死、虫籠窓、ヘタウマ、へタレ、ペテュネグ人、ヘルヴェティア、ポイ、ほうれい線、ボラード(係船柱)、マッピング、マラニック、野猿、ユンノリ、ワニの涙、ライン、ラムスデン現象、ランバダ、リカステ、ルービックキューブ、ルリエール、レジェンド、ンナフカ祭り、など。人名では仙台四郎、福田琴月、富田砕花、クラーク・ゲーブル、スティーブ・マックイーン、チラデンテス、ヘンリー・フォンダ、ユール・ブリンナー、ジェームズ・ギャグニー、バート・ランカスター、マルチェロ・マストロヤンニ、ジャック・レモンなどが載っていない。
広辞苑の解説にも誤りがある。「ホッチキス」の項目「ホッチキスの名は兵器発明家ベンジャミン・バークレー・ホッチキスに因む」とあるが、ホッチキスは発明者ではなく、1885年に没し、会社創設は死後の1895年のことである。そして19世紀の半ばころに今日のホッチキスと同様のものが存在していた。
最後に、分厚い広辞苑だが、約24万語の言葉の中で、ちょうど真ん中にある言葉は何か?「トリビアの種」という番組で調査員が4日かけて調べた結果、1465ページに載っている「精光」と「精好」であることがわかった。ちなみに金田一秀穂先生によると、日本の普通の国語辞典であれば必ず真ん中の頁は「せ」だそうです。
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