フランス革命と世界史(歴史総合)
革命の震源地はパリだった。世界各地で自由主義とナショナリズムの動きが広まった。タレーランのよく知られた言葉に「1789年以前のフランスを知っている人間のみが人生とは何であるかを知っているのだ」というのがあるが、世界史においてフランス革命ほど重要な出来事はない。ところが講談社の「世界の歴史第16巻、ヨーロッパの世紀」は何とルイ14世紀の即位(1774年)からサラエボ事件(1914年)まで140年間を扱っている。期間でいえば決して長い時代を扱う巻ではないが、それまでの世界史シーズ物では3巻、すくなくとも2巻を費やした時代である。(①は「10フランス革命とナポレオン」「12ブルジョワの世紀」「13帝国主義の時代」、③は「15フランス革命」「16ヨーロッパの栄光」)講談社版「世界の歴史16」執筆者の前川貞次郎は病気で執筆できなくなり、代わって若い望月幸男が執筆した。望月も紙幅が足りないことを嘆いている。なぜこのような巻割りになったのだろうか。
歴史好きの者が学生時代に先ず読むのがシリーズ物の世界史である。これらの本は一般概説書であるとともに最新に研究成果も求められる。戦後の主なものをあげる。
①中央公論社「世界の歴史」全16巻 昭和36年
②文芸春秋「大世界史」全26巻 昭和42年
③河出書房新社「世界の歴史」全25巻 昭和44年
④講談社「世界の歴史」全25巻 昭和52年
⑤中央公論社「世界の歴史」全30巻 平成10年
戦後の世界史研究は大きくいえば、ヨーロッパ中心から世界全体の叙述へと移っている。つまり①②③は、中国中心の東洋史とヨーロッパ中心の西洋史を各巻交互に配したものであった。ところが④⑤は、ビザンツとスラブ、東南アジア、ラテンアメリカ、アフリカなどに1巻を配している。つまり西洋史の部分を圧縮する必要がでてくる。考えられることは、フランス革命から第一次大戦までを一つの流れとして見なすことであった。しかしながら、この140年間はフランス革命、産業革命、ナポレオン、ウィーン会議、ビスマルク、ビクトリア朝、帝国主義と植民地政策と現代に直結する重要問題があるため、概説的啓蒙書といえども、とても一書でまとめあげることは至難であるし、読者としても物足らなさを感じざるをえない。これまでの叙述の精度を維持し、いま世界史シリーズを編集するとすればおそらく40巻を超える大部なものとなる。世界史学習はあとに生まれた者ほどたいへんであろう。
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