元禄名槍伝・俵星玄蕃
戦後はGHQ命令で、復讐をテーマとするものは一切認められず、なかでも「忠臣蔵」は最も禁じられた題材だった。しかし、みすみす作れば儲かる「忠臣蔵」をほっておく手はないと、東映が昭和27年、おっかなびっくり「忠臣蔵」のタイトルをさけて「赤穂城」を作った。昭和30年になれば、そろそろ忠臣蔵映画も宜しかろうに、松竹映画「元禄名槍伝 豪快一代男」(芦原正監督)は忠臣蔵外伝・俵星玄蕃の登場である。近衛十四郎の玄蕃に、諸角啓二郎の杉野十平次。戦前の映画には、俵星玄蕃が主演のものもあるが、この映画のように尾張家の家来の時代から浪人となり、江戸で町道場を開き、酒と博打に暮れるという、玄蕃オンリーの映画は珍しい。そば屋の杉野の出番も少ない。のちの東映「血槍無双」も同様の筋立てながら、杉野十平次(大川橋蔵)が主役となっている。「血槍無双」(昭和34)の片岡千恵蔵、「忠臣蔵」(昭和37)の三船敏郎が演じているが、近衛・俵星には及ばない。
ところで赤穂義士の討ち入りに協力したといわれる槍の名人、俵星玄蕃は実在の人物か?もちろん架空の人物で、講談や浪曲でお馴染みであるが、文化年間(1804から1817)のころに講釈師の大玄斎番格が創作したとされます。(高札めぐり両国歴史散歩」墨田区観光協会 2009年) すでに江戸の寛文6年の歌舞伎にその名がでてくる。つまり大星由良助の「星」と「俵」を放る妙技から2つをくっつけて「俵星」というネーミングを考案したのであろう。映画「豪快一代男」でも悪党の渡辺篤を俵で懲らしめるシーンがある。それにしても中台登「忠臣蔵映画一覧」にも漏れた作品であるが、今回初めて見たが近衛十四郎の豪快さが俵星玄蕃とマッチして、痛快娯楽作品に仕上がっている。草間百合子、由美あづさ等共演し華をそえている。
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