ネクタイだけの訪問
マーク・トウェインは晩年コネチカット州ハートフォードに住んでいたことがある。ビクトリア朝の豪邸で、ビリヤード台のある書斎がある。夫婦と3人の娘は「人生で最も幸せで最も生産的な歳月を楽しんだ」という。近所には「アンクル・トムの小屋」で有名なストウ夫人が住んでいる。2人が仲が良いとか親交があったとかは知らない。ストウ夫人のほうが二回りも年上である。ある日、マーク・トウェインは初めてストウ夫人の家を訪れた。そして、30分ほど話しこんで家へもどってきた。家について、鏡を見たトウェインは、ネクタイなしで訪問したことに気がついた。
さてしばらくすると、ストウ夫人の家に、トウェインの使いの者がやってきた。その手紙には、こう書いてあった。
「さきほどは、ネクタイをつけないで参上して、失礼しました。いま、使いのものにネクタイを持たせましたから、お部屋においていただき、30分ほどしたら、おかえしください。なにしろ、1本きりしかないネクタイですから…」。
マーク・トウェインは「トム・ソーヤーの冒険」「ハックルベリー・フィンの冒険」「王子とこじき」など数々のおもしろい小説を著したが、作者自身も愉快な人だった。
« タイの葬式本「ナングスー・チェーク」 | トップページ | ヨーロッパ中世の大学と学問 »
「世界文学」カテゴリの記事
- 繃帯を巻いたアポリネール(2023.04.09)
- アレオパジティカ(2023.06.01)
- ワシリ―・アクショーノフ(2023.02.05)
- 青ひげ物語(2023.02.04)
- マーティン・マルプレレット論争(2018.11.02)
コメント