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2021年9月28日 (火)

「千字文」伝来と王仁の謎

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   わが国の古い伝承で漢籍について述べられているものは「古事記」の応神天皇の条に16年(紀元285年)に百済の国の和邇吉師(王仁)が「論語」10巻、「千字文」1巻をもたらしたという記述がある。また「日本書紀」の応神紀には、莵道稚郎子(うじのわきいらつこ)皇太子が王仁について漢文を習ったと記されている。今日これらを史実と考える研究者はあるまい。中国ではまだ「千字文」は成立しておらず、南朝の梁の武帝(464-549)が周興嗣(470-521)につくらせたものである。だが王仁はその後も帰化人として日本に滞在し、渡来系氏族「西文氏(かわちのふみ)」の祖と伝えられる実在の人物と考えられている。「千字文」を伝えたとするならば6世紀初めの人と考えられる。千字文の一節「散慮逍遥」を書いた木簡が出土している。日本に伝わった「論語」10巻が梁の武帝のとき編纂された「論語義疏」と思われる。つまり王仁は4世紀の人物ではなく6世紀の人と考えられる。王仁に関しては謎に包まれているが、記紀に見える王仁が、朝鮮側の古記録には見えない。「海東繹史」(18世紀末)になって初めて王仁の記述が見える。韓国全羅南道の霊岩に王仁の生誕伝説と遺跡が伝えられる。6世紀には百済など朝鮮半島の国々から、新しい学問や仏教も伝来した。なお、応神天皇が実在の人物であるかどうかは微妙なところだが、この天皇の御代に、ある程度国家という形態が整い、漢字をはじめとする多くの知識や文物が流入してきたととと考えられている。

千字文十種 全14巻 平凡社 1936-1937
評釈千字文 岩波文庫 山田準・安本健吉註解 岩波書店 1937
千字文詳解 増訂 伏見沖敬 角川書店 1983
注解千字文 小川環樹 岩波書店 1984

 

 

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コメント

写真の出典名を教えてください。
2017年11月17日の貴ブログの「千字文伝来考」に掲載の写真を拙著にも使用したいと考えていますが、どこにあるかわかりません。差し支えなければご教授くださればありがたく存じます。よろしくお願いいたします。

画像は転載したもので、親画像はすでに消失して出所不明でわかりません。楷・行・草の3書体を並べた「三体千字文」です。

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