油すまし
大映の怪獣映画「妖怪大戦争」(1968年)は見どころ満載の作品である。古代バビロニアの神ダイモンが江戸に出現して、神田隆に憑依する。日本古来のあらゆる神を退治するが、これを百鬼夜行の土俗の妖怪たちが撃退する。河童、雲外鏡、ろくろ首、のっぺらぼうなどいるが、リーダー格の「油すまし」に注目したい。油を盗んだ人間の霊が化けたもの。すました顔をしているのでこう呼ばれる。浜本隆一の「天草島民族誌」(1932年刊)に、近くの草積峠である時老婆が孫を連れて歩いていた折に「ここでは昔、油瓶を下げたものが出てきた」と言うと「今でも出るぞ」と言ってきたという伝承を採録している。この話が後に柳田國男の「妖怪談義」(1956年刊)に紹介された。映画「妖怪大戦争」では水木しげるの作画が基になっている。顔の造型については文楽の「蟹首」という人形を参考にしている。また知的で落ち着き払った性格で関西弁であることから、当時テレビの人気番組だった「てなもんや三度笠」の珍念をモチーフにしていると考えられる。
コメント