アメリカの人種問題
映画「ゼブラヘッド」(アンソニー・ドレイザン監督、1992年)はアメリカの公立高校を舞台にした物語。ユダヤ系の高校生ザックは、転校生の黒人少女ニッキーと恋に落ちるが、周囲はふたりに冷たい反応をしめす。28年前の映画だが、アメリカの人種問題が浮き彫りにされている。人種問題は1960年代に黒人が市民権を得たことで解決したと思いこんでいるかもしれない。また白人と黒人との問題と考えるかもしれない。ところが実際のアメリカ社会はあらゆる国から移民が来た国だけに人種問題は複雑で根が深い。アメリカでは経済的余裕のある親は私立学校に行かせ、公立学校には貧困層の子どもたちが集る。黒人、ヒスパニック系、アジア系、、それにプア・ホワイトと呼ばれる労働者階級のイタリア系の学生というような状況になる。こうした学校では暴力、ドラッグ、アルコールなどの問題があり、悪循環はいまも続いている。ユダヤ人が差別されるのは彼らが宗教的伝統を守っていて「自分たちは神に選ばれた民族である」という信念があり、長い歴史のなかで他の民族から嫌われてきたという経緯があり、それが今でも偏見として根強く残っている。例えば女優のバーバラ・ストライサンドでさえ、ニューヨークの一等地のアパートを買おうとした時、ユダヤ人であることを理由に断われたことがある。ゼブラヘッドとは、人種の違うカップルを指す言葉で、白黒のシマ馬のように、白人と黒人のカップルをいう。このユダヤ系アメリカ人の心のうちにある内部相克は、現代のアメリカ紗かいを支配するWASP体制の厚い壁を前にして、さらに激しいものとなる。つまり、アメリカ社会に完全に同化してWASP体制のもとで「エスタプリッシュメント」の一員にもぐり込むか、あるいは外から体制変革の運動を起こすかの二者択一を迫る。エスタブリッシュメントの起源は本来イギリス時代にあり、Pilgrimfathersによって形成されたと考えられる。
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