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2020年7月20日 (月)

考える葦

Shojusen  深夜の再放送での「忘却のサチコ」の中の一コマ。会社の上司に注意された小林くん。「検索して調べてもわからない事柄を図書館や本で調べたりするのって、時間の無駄じゃないですか」と。一理あるものの遠慮せずにわからなければ図書館に問い合わせしよう。図書館のレファレンスのなかで故事成句、名言俚諺、人生訓、ことわざ、語句に関する問い合わせは頻度が高い質問である。

  たとえば「春宵一刻値千金」(蘇軾)や「春眠暁を覚えず」(孟浩然)などの出典を問われれば、得意の巻きだが、意外と月並みな文句や書道で使われる語句や掛け軸などの意味を聞かれると少し難儀する。インターネットのない時代に東西の名言を調べることは、かなり時間を要することである。

   「松柏千年翠」という意味を問われたことがある。元は「松柏千年青。不入時人意。牡丹一日紅。満城公子酔」(続傳燈録巻35)にある。意訳すると「松柏はいつも青く、その為に人は心を打たれないが、命短い牡丹の紅い花は人の心を陶酔させる」とある。禅の世界では、永遠に変わらない松柏の青を重んじている。転じて「今昔を問わず真理は変わることなく我々を照らし続けている」という意味。

   都都逸に「人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ」がある。元々は講談「梁川庄八」に「犬に食われて死んじまえ」とある。

  高山樗牛の名言「天にあっては星、地にあっては花、人にあっては愛、これ世に美しきものの最ならずや」。

  東洋の名言。「沈黙しているときに私は充実を覚える。口を開こうとするとたちまち空虚を感じる」(魯迅)。

 

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   西洋の名言といえば、筆頭にブレーズ・パスカルの「人間はこのうえなくか弱い一本の葦にすぎない。しかし人間は考える葦である」がよく知られる。パスカルの言葉としては他に「人からよくいわれたいと願うなら、自分の優れた点をあまりならべ立てないことである」もあるが、あまり知られていない。現代の哲学者の言葉にも優れたものがある。「我々は、いつも過渡期に、時代と時代との間に生きている」(「世界と世界史」) カール・レーヴィット(1897-1973)、「ひとは女に生まれるのではない。女になるのだ」ボーヴォワール(1908-1986)。「私は私自身の証人である」サン・テグジュペリ。「幸福とは幸福をさがすことである」ジュール・ルナール。

故事成語・寓話・小話(明解シリーズ29) 西谷元夫 有朋堂 1984
故事成語名言大辞典 鎌田正、米山寅太郎著 大修館書店 1988
中国の故事・名言ものしり事典 村松瑛 大和出版 1988
故事成語 講談社現代新書1074 合山究 講談社 1991

 

 

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