「赤と黒」の題名
「赤と黒」(1830年出版)は、スタンダールの故郷グルノーブルに近いある村で実際に起こった犯罪にそのまま題材を得ている。1827年7月22日、アントワーヌ・ベルテという青年は、家庭教師先の夫人や娘を誘惑し、最後にその夫人を狙撃して死刑になった。
なお、「赤と黒」という風変わりな題名については、出版当時からさまざまな解釈が行なわれ、運命が赤か黒かによって決定されるルーレットに人生をたとえたのだとする説もあるが、ポール・ブールジェのいうように、「赤」は軍服、「黒」は僧衣を象徴し、それらによってナポレオン没落後、武勲による立身の希望を失ったフランスの貧しい青年が、いかにして社会に進出せんとしたか、を示したものと今日では一般的に解釈されているようである。スタンダール自信の残したノートによると「赤」は共和主義者を意味したらしい。後に書いた未完小説「リュシアン・ルーヴェン」(1835年)を「赤と白」と題しようとしたことがあり、そのとき「赤」をもって共和派のリュシアンを、「白」をもって王党派のシャストレ夫人を示すつもりだった。このことからも、赤はジュリアンの共和主義精神を、黒は僧侶階級を示していると見ることが妥当であろう。
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投稿: ChrisLug | 2017年7月22日 (土) 01時09分