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2020年5月14日 (木)

漱石と西洋美術

6b988d99   夏目漱石の初期の小説、例えば「坊っちゃん」「草枕」などには西洋絵画の新しい芸術に関する記述が多くみられる。文学の世界ではそれがどのような絵であるのか、読む者の想像でしかない。「夏目漱石の美術世界展」(2013年5月14日~7月7日)では現実には存在しない絵を当代の一流画家に再現させて、漱石の美的世界を楽しもうという趣向である。佐藤央育の「森の女」(推定試作)が展示作品中、とくに注目される。「三四郎」に登場する原口画伯は黒田清輝をモデルにしているといわれ、里見美禰子をモデルにしたこの絵は小説の主要なモチーフともいえる。

「三四郎」では三四郎と美禰子が上野の博物館へ、深見という画家の遺作展を訪れる。数多く展示された水彩画は地味ではあるが、筆致に滞りがなくさっぱりしていると三四郎は感じた。この深見画伯は浅井忠のことで、留学中の漱石と同宿したこともあり、親交があった。

 

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 浅井忠 「ベニス」 1902年 東京国立博物館蔵

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