スンプ法と鈴木純一
小学校の理科実験で消えたものといえばアルコールランプとあと1つスンプ法である。スンプ法とは、普通の生物顕微鏡では観察不可能なものを、独特の方法で標本を採り、物体の表面を顕微鏡で観察するための方法で、「鈴木式万能顕微鏡印画法」といわれている。昭和4年にグンゼ製糸の技師、鈴木純一が開発したため、Suzuki's Universal Micro Printing Methodの頭文字からSUMP(スンプ)と呼ばれ、世界的にも通用する言葉である。なぜかわからないが「広辞苑」に採録されていない。おそらく鈴木式という名称が気に入らない旧帝大系の学者が「レプリカ式」と呼ぶことで抹殺しようとしたのではないか。
生物体の表面をセルロイド板に写しとって検鏡する。葉の気孔の外形や哺乳類の毛の表面にある小皮の模様等を観察するのに便利であるし、プレパラートは保存に耐える。画像のような鳩の羽を観察できる。羽の表面は空気をうまく起こさせて空を飛ぶことができるようになっていることが観察によってわかる。スンプの方法はセットになったものが販売されている。①スンプ液をセルロイド薄板にぬる②観察する物にはりつける③しばらくしてピンセットではがす④スンプ台紙(画像)にはりつける⑤顕微鏡で見る。
鈴木純一の略歴。明治19年三重県松阪市に生まれる。東京蚕業講習所卒。大正八年郡是製糸会社技師となり、昭和4年スンプ法を発明。昭和8年「朝日賞」受賞。昭和29年「藍綬褒章」受賞。大妻女子大学教授。スンプ研究所長。論文「スンプの発展」 応用物理5-6、1936。「カイコの絹糸工場」 農業毎日4(4) 1950年3月 毎日新聞社
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