租税の話
今年の大きな話題の一つとして、人気お笑い芸人が何年間も所得を無申告だったことが明らかになった。所得税にしろ消費税にしろ負担される国民の側からすれば嫌な話である。これからさらに高齢化が進むため、IMFのクリスタリナ・ゲオルギエバ専務理事は「日本は消費税を15%に引き上げる必要がある」と提言している。税の多くが福祉にまわされる欧州と異なり、大企業優先の日本では庶民の暮らしが成り立つのだろうか。日本は相対的貧困率はG7で2番目に高い。データを鵜呑みにするするアナリストの意見は危険であり、その国の文化と歴史を踏まえて提言すべきである。そもそも租税の歴史は古く国家の成立から始まる。古代エジプトのパピルス文書には当時の農民に対する厳しい搾取が記されている。近代的な租税制度はイギリスの経済学者アダム・スミスが1776年「国富論」を著したことに始まる。のちその学説が課税制度にも採用される。ウィリアム・ピット(小ピット、画像)宰相の時代にナポレオン戦争の戦費調達を目的として所得税が導入された。ところが評判が悪くナポレオン戦争の終結とともに廃止される。だが間もなく復活し定着する。イギリスの制度が19世紀の間に欧州に伝播する。これに対してアメリカでは所得税の導入が遅れる。1894年に導入されるが、憲法違反という最高裁判所の判決が下り、廃止される。そして長い時間をかけて累進制を検討し、1913年に所得税法が成立する。(世界史)
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