犬も歩けば棒にあたる
「犬も歩けば棒にあたる」(以下、犬棒と略す)江戸いろは歌留多の「い」の札。意味は本来、「犬がふらふら歩くと、棒で殴られるような災難に遭ったりする」ということで、余計な行動は慎むべきであるという戒めであった。ところが、いつ頃からか、「積極的にやってみると思わぬ幸運に出会うことがある」というプラス志向の意味で使う人が増えてきた。それはいつ頃からなのだろうか。アメリカナイズされた志向が一般化された戦後からかと考えたが、実は大正の頃から犬棒を「幸運に出会う」という意味で使われていたことがわかる。豊島与志雄の短編「神棚」(「新潮」大正12年6月号)に「俺はただ一つ処にじっとしていないために、犬も歩けば棒に当るというくらいな気持で、ぶらりぶらりと歩いていたのだった」とある。いまでは犬棒は「やってみると思いがけない幸運にあう」の意で使われることのほうが多い。このように両様に解釈されるのが逆に魅力ともなっている。
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