創作における「三角関係」のパターンについて
夏の連ドラマを観ていると、「ヒロイン+Wイケメン」の図式が採用されることが多い。女性主人公を中心に、2人のイケメンを配置して、三角関係で恋が進展していく。例えば「Heaven?」石原さとみは福士蒼汰・志尊淳。「凪のお暇」黒木華は高橋一生・中村倫也。女性視聴者が多いので、イケメン2人が一般的に視聴率が取れるという算段なのだろうか。むかしは男1人に女2人が多かった。古くは松竹映画「暖流」佐分利信に高峰三枝子・水戸光子。男子の間で、高峰派と水戸派に分かれ、君ならどっち選ぶか話題になった。戦後バブル期でもまだ男1人に女2人の時代は続いた。織田裕二と女2人の三角関係が軸となった。女1人に男2人は2000年代になって韓国ドラマ「冬のソナタ」の影響が大きいからだろう。 鈴木京香主演の17歳年下、既婚男性との熱愛ドラマ「セカンドバージン」(大石静脚本)も話題になった。愛人が妻よりもかなりの年上であることが異色ではあるが、夫、妻、愛人という三角関係では珍しいものではない。さて、このドラマづくりの黄金法則とでもいうべき三角関係の創案者は誰か。いうまでもなくノルウェーの戯曲家イプセン(1828-1906)である。もともとはリヒテンベルクが言った「夫、妻、情人から成る至福の三角関係」がヒントになったといわれる。これを森鴎外(1862-1922)、島村民蔵(1888-1970)らにより訳語として成立した可能性が高い。1920年代には中国語・韓国語にも日本から輸入している。
さて3人の恋愛パターンには次の6つの型がある。
①妻のいる男性が独身女性と不倫(「ポケ・ペルが鳴らなくて」亭主の浮気話なので主婦層には好まれない)
②夫のいる女性が独身男性と不倫(「ヘッダ・ガブラー」、「ボヴァリー夫人」、「アンナ・カレーニナ」、「氷点」)
③許婚者がいる女性と独身男性(「冬のソナタ」「中学聖日記」)
④許婚者がいる男性と独身女性
⑤2人の女性が同じ男性を好きになる(少女漫画の9割はこのパターン)
⑥2人の男性が同じ女性を好きになる(「秋の童話」)
さらに同じパターンの話でも夫、妻、愛人の3人のうち、だれの心理を基本として描くかで変わってくる。つまり「セカンドバージン」は愛人の立場で描いたことで亭主の浮気話というトーンをダウンさせることに成功したといえるだろう。(参考:清地ゆき子「恋愛用語「三角関係」と三角恋愛の成立と定着」日本語の研究 2010年4月)
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