ヘロストラトスの名声
7月18日、京都アニメーションが放火され、平成以降最悪の犠牲者がでる事件となった。容疑者はすぐ逮捕され、自身は「小説盗んだから放火した」などを叫んでいるが、その動機については取調べ中で不明である。実名も公開されたが、テロのような放火の再発を防ぐことが急務だ。
古代ギリシアの時代、有名になりたいという一人の若者がエフェソスにあった高名な神殿・アルテミス神殿を放火したことがあった。逮捕された若者はヘロストラトスといい、放火の事実を認め、「自分の名を不滅のものとして歴史に残すため、最も美しい神殿に火を放った」と述べた。エフェソス市民たちは、有名になりたがる人間による蛮行の再発を防ぐため、彼に関する全ての記録を抹殺することに決めた。これは記録抹殺罪と呼ばれ、ヘロストラトスを死刑に宣告したのみならず、この先彼の名前を口にした者も死刑にしてその名を歴史から抹殺しようとしたのである。しかしこうした処置にもかかわらず、永遠に歴史に残りたいというヘロストラトスの野望を阻むことはできなかった。同時代の歴史家テオポンポスがこの事件と犯人とを記録に残しており、キケロ、プルタルコス、ストラボンら後世の歴史家たちもこの事件に触れているため、ヘロストラトスの名は現在まで伝わってしまった。英語では、Herostratic faceという言い回しがあり、「どんな犠牲を払ってでも有名になる」ことを指す。ヘロストラトスの放火事件は、1950年に起きた金閣寺放火と似ているかもしれない。若い僧侶の心理は、三島由紀夫や水上勉などの作家により文学作品として創作された。
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