漱石、冬の句
「漱石をして小説家たらしめるに至った原動力は子規であった」と小宮豊隆は言っている。夏目漱石は、生涯2431句もの俳句を詠んだ「俳人漱石」でもあるが、写生を唱えた子規が、漱石の口語体小説の完成に大きな影響をもたらしたことはいまさら言うまでもあるまい。ここでは冬の句を並べてみる。
武蔵野を横に降るなり冬の雨
黙然と火鉢の灰をならしけり
埋火や南京茶碗塩煎餅
病あり二日を籠る置炬燵
水仙の花鼻かぜの枕元
くさめして風引きつらん網代守
口切にこはけしからぬ放屁哉
雪の日や火燵をすべる土佐日記
凩や海に夕日を吹き落とす
漸くに又起きあがる吹雪かな
汽車を逐て煙這行枯野哉
わが影の吹かれて長き枯野かな
愚陀仏は主人の名なり冬籠
淋しいな妻ありてこそ冬籠
うき除夜に壁に向へば影法師
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