怪談河内介
1862年のこの日、維新の志士、田中河内介は捕らえられて、薩摩への護送の船中で殺された。
大正の初め、京橋の画博堂で何人かが怪談話をしていると、一人の見慣れない男がやってきて、自分にもひとつ話をさせてくれという。田中河内介の最期である。河内介は幕末の勤王家で祐宮(明治天皇)の教育係でもあり、立派な人物であった。伏見寺田屋で薩摩藩士有馬新七らと関白九条尚忠暗殺を画策する。だが島津久光は奈良原繁、大山綱良らを派遣して鎮撫させた。河内介は捕らえられ、鹿児島へ護送される途中、子の瑳磨介とともに殺害された。ところが座の一同はこの結末を聞くことはなかった。男の話は、いつまでも本題に入らない。語り始めるとまた最初に戻ってしまう。やがて皆あきあきして、一人、二人と席を立つものが現れた。いつか部屋には、男一人だけとなった。そして皆が一斉に席を外していたその僅かな時間の間に、何と男は死んでしまった。結局、河内介の最期は語られることはなかった。このような田中河内介禁忌はいまでも続いている。NHK大河ドラマ「篤姫」「龍馬伝」「八重の桜」でも田中河内介は登場しない。「天皇の世紀第9話」で丹波哲郎が演じたのが最初で最後であろう。田中殺害事件がタブーとなったのは、明治天皇が河内介を大変に憐れみ明治元勲たちが禁忌としたと一般には理由づけられている。むしろ祐宮時代をよく知る田中河内介が、明治天皇すりかえの首謀者にとって邪魔な存在であり、禁忌としたのが真相ではないだろうか。(5月1日)
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明治天皇の幼少期のすりかえ事件の真相は?
この辺詳しく書いたものあまりないので、謎めいた怪談みたいだが・・
投稿: 根保孝栄・石塚邦男 | 2013年4月30日 (火) 21時06分