忠臣蔵の虚と実
ああ、また「忠臣蔵」か、という気分ながら、やっぱり最後まで見てしまう。新春ワイド時代劇「忠臣蔵~その義その愛」は内野聖陽が演じる堀部安兵衛とその妻ほり(常盤貴子)が主人公。堀部ほり(1675-1720)は討入り後、45歳で熊本で亡くなっている。木村拓哉の「忠臣蔵」(2001)では妻の深津絵里と離婚したことになっているが、今回は夫婦仲は良かったが、常盤貴子が明るすぎるのが不自然な感じだった。上杉家用人で吉良方についた親友吉川山右衛門(村田雄浩)との対決がドラマのメインか。吉川は清水一学の代わり。色部又四郎も千坂兵部の代わり。千坂はこのとき既に病死しているので、近年は色部となることが多い。最後の脱盟者毛利小平太の没年が不明なので、ドラマでは討入り直前に死ぬ場合と、生きのびて所帯を持って泉岳寺に墓参する場合がある。伊埼充則毛利小平太は墓参だった。全体に恋の絵図面取り、赤垣源蔵の徳利の別れや大石の東下りなどの人気の挿話を入れないのは、巷説を排し史実に近いシナリオといえる。とくに討入りで山鹿流陣太鼓はなかったのには驚いた。史実でも太鼓は打ち鳴らされなかったとされる。堀部安兵衛の人物像も巷談の「呑んべい安兵衛」とは異なり、史実に近いものとなっている。実際の安兵衛は酒を飲まなかったといわれるし、慎重で手堅い性格で能書家だったという。「武庸筆記」を書いて細井広沢に預けたことがドラマで紹介されているのも面白い。このように史実に近い忠臣蔵は評価できるものの、二刀流清水一学や和久半太夫、俵星玄蕃が登場しないと物足らなさを感じてしまう。元禄十五年十二月十四日の深夜は「仮名手本忠臣蔵」以来、雪の夜となっているが、堀部安兵衛の従妹、佐藤條右衛門が記した古文書によれば、討ち入りの日は月の夜だったとある。(浅野内匠頭殿御家士敵一件佐藤條右衛門一敞覚書)。義士の衣装も火事装束に統一されたものではなく、任意のものだったらしい。
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