項羽と虞美人
韓国ドラマ「師任堂」。中部学堂の入試問題は、「司馬遷の項羽の評価について」司馬遷は史記で「志は果たせなかった。しかし項羽ほどの人物は再び現れまい」とする。項羽は、古来より「最期に及んで愛人や馬などに未練を見せ、めめしくて武人らしくない」と批判するものが多い。ところが明の呉偉業(1609-1671)の漢詩「虞兮」では、虞美人や騅など、愛する者への思いやりをつねに忘れなかった項羽は、一人の女性から、死を共にするほどの信頼を寄せられた。このことこそ、項羽をまことの英雄と呼ぶにふさわしいと賛辞を送っている。
虞兮
千夫も辟易す 楚の重瞳
仁謹 居然たり 百戦の中
博し得たり 美人 心に死を肯ずるを
項王 此の処 是れ英雄
*
瞳が二つずつの両目でにらみつけると、千人の敵兵も圧倒されしりごみをした。あまたの戦の最中、つねに愛する者へのいつくしみを忘れなかった。そのために、虞美人が進んで殉死を受け入れる結果を得たということ。項羽はこの点においてこそ、英雄と呼ぶにふさわしい男だ。(参考:石川忠久「漢詩をよむ」1994)
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